第67話【お世辞?】

「沙耶、ちょっと髪切ったか?」


よく見ると沙耶の髪の毛先が整えられとても綺麗になっていた。


「うん、よくわかったね。

朝から美容室いって毛先だけ整えてもらったの」


「服も似合っていてとても綺麗だよ」


快人と言う人間がこんなキザったらしいことを言うわけないと思ったそこのあなた。

その考えは正解です。

昨日の晩、母さんとカエデからちゃんと「褒めるんだよ!」って耳にタコができるほど言われたからな。


「あ、ありがとう。

う、嬉しい」


沙耶が顔を赤くして下を向く。


うん、この可愛いな!

これを見られただけで俺が恥ずかしい思いして言ったのは間違いじゃなかったと思えるよ。


「快人くんも髪切ったんだね。

パーマもかかってる?」


「うん。

結構バッサリといったよね」


俺は黙って見ていただけなのでなんか他人事のように言ってしまう。


「似合ってるよ。

それに服も新しいよね?

とてもカッコイイよ」


「おう、ありがとう。

じゃあ、行くか」


俺は、恥ずかしいので流すことにした。


「あー!

絶対私がお世辞で言ったと思ってるでしょ!」


「思ってないよ。

早くしないと置いてくぞ」


「もー!

待ってよー!」


沙耶は先に行った俺を追いかけてくる。


「昼食どうする?」


「とりあえずショッピングモールに向かって歩いて、良さそうなところがあったら入ろ」


「おっけー」


そうして俺達はショッピングモールに向かって歩く。


「腕組んでいい?」


「だめ」


「えー何でよー。

いいじゃん」


「だめ」


「じゃあ、手を繋ごう!

これもダメって言うなら拗ねるよ!」


まあ、それぐらいならいいか。


「いいぞ」


そう言って俺は沙耶の方に手を出す。


「え!

ほんと!

やったー!」


沙耶は笑顔で俺の手を握る。

しかも恋人繋ぎで。

まあいいんだけど、こいつは恥ずかしくないのか?


「快人くん今日、何か静かじゃない?

どうしたの?

もしかして、私とのデート嫌だった?」


沙耶はオロオロとしながらそんなことを言う。


「はははっ」


「何笑ってるの!?」


「いやごめん。

女の子とデートするのは初めてだから緊張してたんだよ。

それに比べて沙耶は楽しそうだね」


「良かった。

デートが嫌だったとか言われたらガチ泣きするところだったよ。

私だって男の子とデートするのは初めてだから緊張はしてるよ。

でもそれ以上に楽しみたいっていう方が大きいの」


「そうだな。

せっかくのデートなんだ精一杯楽しもうか」


「おー!」

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