Act.2-2

「ルル、大事な説明が抜けてる」

「“今すぐには帰れない”って事だって、ちゃんとお話しなきゃいけませんよ。プレイヤーさんが驚いてしまっていますわ」


 受付に佇む少女の後ろの扉が開き、二人の少女が入って来た。驚いた事に、三人共全く同じ顔をしている。


「ララ、リリ」


 ルルと呼ばれた少女は、振り返って二人を見た。


「ちゃんと説明しなきゃダメだろ? ただでさえ、プレイヤーの人は理解出来ない状況なんだから」

「うん、ごめんね」


 訳が分からずボーッとしてそのやりとりを見ていると、一人がこちらに向かって話し掛けてきた。


「驚かせてしまってすみません。私達三人はここで、プレイヤーの方への案内役をしております。私は、リリと申します。彼女がララ。そして、最初にお会いしたこの子がルルですわ」


 そう言ってリリは、自分達の自己紹介をした。三人共顔は同じだが、それぞれ髪型が違う。ララはショート、ルルはセミロング、そして今説明をしてくれたリリはロングである。

 三人の柔らかく朗らかな笑顔を目にし、美亜の頭と心は徐々に落ち着きを取り戻してきた。そこで、思い切って気になった事を質問してみる。


「えっと……“今すぐには帰れない”って事は、後でちゃんと帰れるって事?」

「はい。ある一定の条件をクリアいたしますと、プレイヤーさんの世界へと繋がる道が開かれますわ」

「プレイヤーとか言ってるけど……本当の本当に、ここはゲームの中なの?」

「そうですわ。正式にはまだゲームの中ではなく、入口と言ったほうが正しいのでしょうけど」


 リリがにこやかな笑顔で答えた。


「やっぱりそうなんだ……」


 美亜はようやく、自分の状況を飲み込む事が出来たのだった。と、言うよりも、持ち前の好奇心が湧き、この不思議な状況が何だか楽しくなってきたのだ。これも彼女の性なのだろう。そんな心境の変化を悟ったのか、リリが話し出す。


「ご理解していただけましたか? それでは、今から貴女が冒険へ出るために必要な設定と説明をいたしますわ。こちらへいらして下さいな」


 そう言って、受付前まで来るように促す。受付前、要は三人の前まで来ると、そこにはタッチパネルのような物があった。


「それではそちらに、貴女のお名前をお書き下さい」


 リリがそう言うと、ルルからタッチペンのようなものを手渡された。そして、その隣でララがカチカチとパソコンのキーボードを叩くと、目の前のタッチパネルに【お名前を教えて下さい】の文字と共に空白の記入欄が出てきた。


「カタカナ表記でお願いしますわ」


 リリに言われた通り、カタカナで“ミア”と記入する。


「ミア様ですね。かしこまりました。それではミア様、これから説明に移行させていただきますわね」


 リリの声と共にララがキーボードをカチカチと叩くと、目の前にあるタッチパネルが徐々に上へと起き上がってきた。


「わっ! スゴイ……」


 感心してその様子をじっと見ていると、ルルが何処からともなくイスを持って来る。


「どうぞ、こちらにお掛けになって下さい」

「ありがとう」


 背もたれのない、クルクルと回るいわゆるターンチェアーに美亜は腰掛けた。前を見ると、準備が整ったようでタッチパネルは完全に垂直に立ち上がっている。


「それでは、このゲームの概要を映像にてご説明していきます。そちらのパネルをご覧くださいな」


 リリがそう言い、ララがキーボードをカチカチと叩く音がした後、パネルに映像が流れ出した。

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