Act.2 Tutorial

Act.2-1

 しばらくして光が収まった為、美亜はそっと目を開ける。そこは辺り一面、真っ白で何も無い無機質な所だった。


「え……」


 状況が飲み込めず、ただ立ち尽くす。


「ここ、どこ? 確かに自分の部屋に居たはずなのに……」


 キョロキョロと探るように辺りを見回す。よく見ると壁や天井、床などの境目が見え、ここが一つの部屋であるという事が分かった。だが、ここがどこなのか、何故ここに居るのか、が未だに分からず首を捻っていると、後ろから声がした。


「ようこそ」


 驚いて声がした方へと振り向くと、それもまた白い受付のようなスペースがあり、そこに金髪の綺麗な顔をした少女が座っていた。

 肩で切り揃えられた金髪に、まだあどけなさの残るその顔は、小学生くらいだろう。11、2歳といったところだ。


「ようこそ」


 目が合った少女は、もう一度ニコッと笑って言った。そして、美亜の反応などお構いなしに話始める。


「こちらでは、プレイヤーの方の初期設定を行って頂きます」

「初期設定……?」

「はい。これから貴女が冒険へ向かう為の準備をしていただきます」


 少女が言った言葉に、頭が混乱してきた。


「えっ……ちょ、ちょっと待って! 初期設定とか冒険とかって……これってもしかしてゲームの中、とか? そんな訳ないかぁ!」


 そう一人で自問自答していると、少女はニッコリと笑って答えた。


「その通りです」

「………冗談でしょ?」

「いいえ。本当です」

「う、そ……」


 三度微笑む少女に、更に頭は混乱する。


「こ、ここから戻る事は……?」

「出来ません」


 キッパリと告げられた答えに、美亜は突き付けられた現実を受け入れられず、ただただ呆然と突っ立っていた。

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