Act.1-8

「ただいまー!」


 美亜が家へ入ると、パティが嬉しそうに尻尾を振って出迎えてくれる。白いフワフワのその頭と身体を思いっ切り撫でてやり、そのままじゃれ合いながら居間へ向かうと、夕ご飯のいい匂いが漂ってきた。


「ただいま」

「おかえり。あと十分くらいで出来るから、先に着替えてらっしゃい」

「はーい」


 仕度をしながら言う母親に軽く返事をして愛犬を放すと、二階へ上がって自分の部屋へと入った。


 机に鞄を置いたところで、先程購入したゲームソフトを取り出す。やはり箱には何も書かれておらず、題名すら分からない。中を開けてみると、ディスクと一緒に一枚の藁半紙が入っていた。藁半紙には金色の文字で、“導かれし光よ。世界を救いたまえ”とだけ書かれてある。

 そこでふと、今朝見た夢の中での言葉を思い出した。


「そういえば、今朝の夢でも同じような事を言ってたような……デジャヴュってやつ?」


 考えていると何だか不思議な気分になり、少しだけやってみる事にした。


「冒頭部分だけでも見てみよっと」


 そう言って制服も着替えず、ディスクをゲーム機にセットすると、テレビの前に座った。

 外では雨が更に強さを増し、雷が大きく鳴り始めていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る