Act.1-7

 帰る途中、空の雲行きが怪しくなってきた為、駿は急いで自転車を走らせた。二人の家の前に着いたとほぼ同時に、しとしとと雨が降り出す。

 自転車を自分の家の車庫へと運んでくれる彼に、美亜は笑顔を向ける。


「今日は色々とありがとね」

「ん。まあ、これからも気を付けろよ」

「大丈夫だって。今日はちょっと油断してただけ。いざとなったら、ガツンとやってやるから」


 満面の笑みを浮かべて言う彼女に、駿は今日何度目か分からない溜め息を吐いた。そして、「じゃあな」と告げて隣接する自分の家へと小走りで戻って行く。

 玄関前で振り返ると、家の中へ入ろうとした美亜を呼び止めた。


「明日も雨だろうから、早く起きろよ。じゃねえとバスに乗り遅れんぞ」

「分かってるって。何か、お父さんみたいだよ」

「うるせえっ」

「ありがと。じゃ、また明日ね」


 そう言って、美亜は家の中へと入って行った。駿もそれを見届けてから、家の中へと入る。


 雨は先程よりも強く、地面に打ち付け始めていた。



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