第3話 取締役会 乱入

 木曜日


 とにかく私は動き回ったのだ。


 お母さんを犯罪者にしようとしてる輩を許す訳にはいかない。


 まずは味方を増やさねば。


 お母さん、待ってろよ。


 が、


 が、


 お母さんは自宅謹慎中にも関わらず、今日はネズミの国に遊びに行ってくるだと。


「だって、せっかくお休み一杯もらえたんだもん」


 って、休みじゃ無いし。


 自宅謹慎の意味分かって無い。


 はぁー何だかな?


 自由すぎるんでないかい?


 まぉ良っか。お母さんだしなっ。


 昨日は夜遅かったけどキーマンとも言える人と面会してもらえた。


 なんとか味方になってもらえた。



 今日はお母さんの会社の人から話を聞いて来た。


 相手にバレないように慎重に


 明日香さん、大忙し。



 金曜日


 今日はキーマンの紹介で最重要人物と会ってくる。


 ちょっと緊張。


 でも上手くいった。


 多分。もう大丈夫。


 お母さん、ありがとう。


 やっぱり、お母さんは愛されてるな。


 ふっふっふ、後は完膚なきまで相手を叩きのめすのみ。


 土日は根回し、根回しで疲れた。


 よし、外堀は完全に埋めた。


 なかなかやります。明日香さん。


 相手は全く油断してる。


 そりゃそうだ。


 相手は、反撃するなんて思ってないんだから。





 そして


 いよいよ決戦の月曜日。


 10時から会議室で取締役会が始まった。


 私は有給をもらって意気揚々と母の会社に乗り込む。


 社長の秘書の方に会議室横の控え室に案内された。


 私が頼んだ人達もみんな集合してる。


 よし、この勝負もらったぜ♪



 取締役会


「それでは最後に女性社員による業務上横領の件について経理の方から報告してもらいます」


 その時突然社長が立ち上がって

「副社長の取締役解任の緊急動議を提案する」と発言した。


 副社長はびっくりして

「なっ・・・どうして?」

 副社長の取り巻き達もざわついている。


「副社長には業務上横領の事実がある。しかもそれを女性社員に押し付けようとしていた。会計監査人にも調べてもらったので間違いない。今から渡す資料を見ていただきたい」


 秘書が資料を全員に配る。


 それを見て副社長はぶるぶる震え出した。


 取り巻き連中も同じだ。


 社長は

「何か言う事はあるか?」と副社長に聞く。


 副社長は気が動転していたのか

「お義父さん、どうしてこんな事を・・・社長にしてくれる約束でしたよね」と涙声で訴えている。


「馬鹿者、お前は調子に乗りすぎた。私はお前が社長に相応しいか色々調べさせたが、お前は最低な奴だな。セクハラ、パワハラし放題。外に女もいるようだし、隠し子の事も分かっている。しかも自分の横領の罪を事もあろうか彩子君に押し付けようとするなんて。大馬鹿者だ。分かっているのか? 彩子君は会社みんなの人に愛されている我社のアイドルだぞ。勿論私も大好きだ。お前は会社全員を敵に回す積もりだったのか? そんな奴に会社は任せられん」と社長が怒鳴った。


 もう副社長に反撃する術はない。


 そこで私の登場。


 私は会議室に入り、取締役会全員の注目を集めながら副社長の前に行き仁王立ちで、じっと目を睨んでから、おもいっきり平手打ちをした。


「バシッ」って乾いた良い音。


 副社長は椅子から転げ落ちて、不様な格好のまま寝転がっている。


 何が起こったの分からないようでポカーンと私の顔を見る。


 私は言ってやる。


「私はあなたが嵌めようとした彩子さんの娘です。あなた、頭大丈夫? お母さんが横領なんて出来るハズないじゃないの。そんな事、この会社の人なら誰でも知ってるよ。それにあなた、若い頃お母さんに随分世話になったはずなのに、どうしてお母さんに罪を擦り付けようとしたんですか?」


 副社長はもう諦めたのか素直になって

「ごめんなさい。僕は入社した時から彩子さんの事好きだったんです。でも何度誘っても振られて・・・だんだん憎くなってしまって・・・」と言って泣き出した。


 男前が台無し。


 40過ぎの男がみっともない。


 お母さんの事好きだったんだ。


 やっぱりな。


 お母さん、愛され過ぎ。


 ちょっと嫉妬。


 でも、こんなもんじゃ許してやらない。


 明日香さんを敵に回すと怖いよ。


 私は控室に戻って三人の女性と二人の紳士を連れて来た。


 女性はもちろん奥さん、即ち社長の娘。そして愛人二人。一人は赤ちゃん抱いてる。


 紳士は会社の顧問弁護士と奥さんの弁護士。


 会社の顧問弁護士

「あなたを業務上横領の疑いで告訴します」


 奥さんの弁護士

「あなたに不逞行為による、慰謝料の請求をします」


 奥さん

「あなたには愛想がつきました。離婚します」


 女性A

「赤ちゃんの養育費を一括で払ってください。もう別れます」


 女性B

「信じられない。あんたって馬鹿だったんだ。あたしも別れるから慰謝料頂戴」


 副社長 沈没


 こりゃ当分立ち直れないわ。


 会社も首だろうし。


 40過ぎの就職活動は大変だろうな。


 ざまぁー。

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