人生の転機は突然というか爆発的な件。

第1話


『ーー、ーー‼︎‼︎ーミ‼︎‼︎キミ‼︎大丈夫⁈』


 あれからどれくらい時間が経ったのだろうか。長い時間記憶を失ってた気がする。そんな僕を引きずり戻す、少女の様な凛とした声が響く。


『声は、聞こえるみたい。目は開けれる⁈体は無理に起こさなくていい、というか起こさないかこれ…。とりあえず見えたらこっち向いて⁈』


 声に導かれるままに目を開こうとする。いや、というか目を開けた感覚はないが。とりあえず周りを見渡そうとする。すると声の主が視界に入り……。


『あっ、やっと気付いた。良かった〜‼︎‼︎』


『……っ⁈⁈』


 目に映ったのはいかにもゲームだと主神とかその位にいそうな厳ついお爺さん。眼光は鋭く、巌のごとくどっしりと構え頭に輪がついた超厳ついお爺さんだった。だが、その口から発せられてるのは間違いなく少女の声。どういうことなの……。


『いやー、最近老人か自殺者ばかり相手してたからキミみたいなのは久々だよ。あ、はじめまして。私は……んー、なんて呼ばせたらいいんだろう。何がいいかな⁇』


 可愛らしい少女の声で厳ついお爺さんが悩む振りをしたりため息をついたり、何というか違和感が半端無い。疲れてるのだろうか僕は。


『むー、答えてくれない。それじゃキミの記憶から適当に引き出すかな。えーと……ゼウス⁇えー、私こんなに厳ついかなぁ。』


 鏡見てどうぞ。


『ひっどーい‼︎これでも神界じゃ『あ、転生担当の……きょ、今日もその、可愛らしいですね。』とか言われるのに‼︎』


 ……それ、多分避けられてるんです。


 厳格な老人が表情変えずに拗ねてる姿を見てこれ以上無い頭痛がしてくる。というか転生担当⁇どういうこと⁇


『あ、そこに気付いたんだ、偉い偉い♪そう、私は転生担当の神。前世で心半ばに死んだ人や悔いがある人間にチャンスを与える神よ。』


 ……という事はあれ、僕今死んでるの⁇そんな実感がないけど。だが思えば最後の記憶。あれは紛れもなく爆発をほぼ0距離で受けたのだろう。焦げ付く匂いと悲鳴を一瞬だけ感じたし。


『そうだね、キミはバスジャック犯が行った人質と警察を巻き込んだ自爆によって死んだ内の1人だよ。だからほら、現状体は千切れてるし顔もぐちゃぐちゃ。なんというか……モザイク無しじゃ放送できない肉塊になってるよ⁇』


 お爺さんが僕の視線に鏡を出して全身を見せてくる。うわぁ。これは。スプラッターとかの次元超えてるというか。顔とか皮が全てめくれてるし誰か分からないねこれ。しかも死んでるからか分からないけど吐き気とか来ないし。客観的な感想しか出ない。


『まぁそんな訳で、キミの容姿を整えて肉体を戻して、どうせなら未曾有の脅威に晒されてる世界を救って欲しいなって所なんだけど。どう?』


 なんと。予想外の展開。まさか僕が異世界に転生できるなんて。え、これ夢⁇夢じゃないよね⁇頬っぺたつねっても痛くない⁇⁇あっ、今手も頬っぺたもないんだった。


『その反応を見るからには喜んでもらえてるみたいだね‼︎それじゃ早速体を戻して旅立って貰いたいんだけど……1つだけ謝らないといけない事があるの。』


 ん⁇なんだろ。あー、この手の話によくあるチート能力とかかな。ピーキーなのしか残ってないとか……⁇


『いや、えーっとね⁇キミの場合、元々の能力が低すぎるのと、今回修復する点が多すぎて転生ポイントというか、そういうのが足りなくてあげれないの。一応基礎能力は普通より高めにしてあげるし、体に欠損はない状態には出来るけど……一般冒険者に毛が生えた程度にしかならないならそこだけは許して‼︎‼︎』


 ええ……。ここでも僕のダメさが光るの……。ま、まぁでも経験値を稼いでお金も稼げば何とかなるか‼︎


『そ、そうだよね‼︎あ、後キミは元々気弱だったしそれだと大変だから、言葉遣いとかに強制的な制約をかけておくよ‼︎これでもう舐められる事ないから‼︎』


 え、何その呪い。この人神だよね⁇神様なんだよね⁇今強制とか言ってたよ。この少女爺さん。


『……そ、それじゃ体を復活させながら転生させるから‼︎年齢は…17位でいっか‼︎えーい☆』


 こ、こいつスルーしやがった‼︎まって、確かに言葉遣いが若干荒く……ぼ……いや、俺が使わねー様な言葉に、って、意識、が……。


 目の前が霧がかった様に真っ白になりながら、俺は宙に浮いて様な、緩やかな浮遊感に覆われーー



 ーー見知らぬ世界へと降り立った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る