第33話 金属バット

「なんだ、てめえ。オレ達に用事があんのか!?」


 怖! どんな人生を生きてきたらそんなに攻撃的な人格になるんだよ。こいつらの保護者はしっかり教育しろよな。


「用事はないんだけどさ。どう見てもそれカツアゲじゃん? 犯罪じゃん? やめた方が良いと思うぜ?」

「ああ? てめえ俺らに説教しようってのか?」

「説教なんて高尚なモンするつもりはねえよ」

「……こいつがオレ達にぶつかって来たんだぜ? 慰謝料もらうのは当然だろうが!」

「それがやりすぎに見えたからこうやって話し掛けてんだよ」


 いかんな。オレの方もヒートアップしている気がする。それにしてもなんでこの手の奴らはこうも血の気が多いんだ。最悪も想定しておかないといけねえな。


「で、俺らにどうして欲しいんだ?」

「言うまでもねえだろ。さっさとその人から手を引いて帰れってこった」

「ああ!? なめてんじゃねえぞコラ!?」


 今までの会話の中でお前らを舐めたような言葉は言ってないと思うんだが、そんな理屈はもう通用しない。オレもこいつ等も正常な判断が下せないくらいには頭に血が上っちまったらしい。というかアホなのはオレの方だな。相手は3人、オレ一人。勝ち目ねえじゃねえか。なぁんで喧嘩売っちまったんだ。浩介、お前のせいにしておく。


「ヤケクソだ! 来るなら来い!」

「上等じゃねえか。ぶちくらす!」


 何が上等なのか。ぶちくらすとは何なのか。ぶち殺すってことか? 穏やかじゃねえなあ。


「ぶっふ!?」


 オレに金髪不良男が右ストレートをぶっ放してきやがった。こいつの拳はオレの左頬をクリーンヒットさせて抜けていく。痛過ぎんだろ!? くっそう漫画だったらこれくらい楽に受け止めてるだろうによ! 現実は厳しい!


「あ……う……」とオレはよろめきながら立ち上がる。

「なんだぁ? 調子こいてた割にはクッソ喧嘩弱えじゃねえか。てめえ。そんなんでよく俺らとやり合おうと思ったな?」


 うるせえ。無謀なのは百も承知だ。どうやらオレに未知のパワーが宿っていて覚醒! なんていうマンガ的、アニメ的展開は期待できないらしい。救いなのは久遠姉妹のようにマジで殺される感じはないってことくらいか? それが救いって言えてしまう程、今の置かれている状況が異常なことにオレはつい笑ってしまう。


「あん? なにてめえ笑ってんだ? 変態か?」

「んなわけねえだろ!」


 オレは当たらないとわかっていても反撃した。殴られっぱなしで終わってたまるかよ!


「ぐふ!?」


 オレのパンチはかわされ、代わりにカウンターでみぞおちにアッパーを喰らわされた。どんだけ喧嘩慣れしてんだよ、こいつら。


「うっとうしいからよ。これで終わらせてやるよ!」


 不良仲間の一人、スキンヘッドの日焼け男がバットを持ち出してきた。それでなにするんだ。野球で決着つけようとでも言ってくれんのか? ……そんなわけねえよな。道具は正しい使用方法で使えってんだ。


「死ねゴラァ!!」


 金属バットがオレの頭部に直撃する。鈍い感覚だ……。こりゃ脳もやられちまったに違いない。あーあ、変な正義感出すんじゃなかったぜ。

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