第11話 テイルブレード
「……なぜ猫が喋っている!? その障壁はその猫が展開しているの!?」
久遠みくが叫んでいる。どうやら常識外れの彼女にとっても猫が喋ることは『常識の範疇外』であるらしい。
「いかにも、私がこのバリアーを展開しているのさ。驚いたかい?」
いきなり現れた子猫が言葉を喋っているのを聞いて原理不明のバリアーを張っているのを見ても驚かない人間がいるならぜひともその顔を拝んでみたいもんだぜ。……なんにしてもこの猫はオレの味方らしい。久遠みくは一発止められた直後、拳銃から弾を連発しているが、全てこの猫の障壁に防がれている。だが、怖えよ。なに躊躇なく拳銃ぶっ放してくれんだよ、あの女子は!
「子猫ちゃん、あなた誰の差し金なのかしら?」
「そんな重要なことを君に話すと思うかい? 久遠みくさん!」
子猫がにやりと笑っている。猫ってこんなに感情豊かな表情を見せてくれるもんだったっけ? 小学生の頃、友達が飼っていた猫に餌をあげさせてもらったがヤツら餌をくれるのは当たり前だろとでも言わんばかりに無愛想だっからな。オレの猫への印象はあまり良くない。あ、子猫は別だぞ? どんな動物も赤ちゃんはかわいいもんだ。印象が悪くなることがあろうはずもない。
「ご主人、ぼーっとしないで下さい。久遠みくがうごきますよ!」
「お、おう」
久遠姉は拳銃がダメなら刀だとでも言わんかばかりに、刀を構えて走り込んでくる。
「おらああああああ!」
ものすごい勢いで刀がバリアに振り下ろされる。刀がバリアに接触した後も久遠みくはこれでもかと力を入れ続けていた。
「あ、まずいわ、これ」
オレは子猫が呟くのを聞き逃さなかった。子猫が呟き終わると同時にバリアにひびが入ったかと思うと、バリンと音を立てて割れてしまう。
「ご主人、下がって!」
「言われなくてもやっとるわ!」
「子猫といえども邪魔するなら容赦しないわ。死ね!」
久遠みくは日本刀を子猫に向かって振り下ろす。しかし、そこはさすがに動物。華麗な身のこなしでみくの攻撃をなんなくかわし続ける。
「ちょろちょろと鬱陶しいわね。これならどう?」
みくは拳銃のようなものを左手に顕現させると、子猫に向かって射出する。
「ネットか……!」
猫は銃から発射されたネットに絡まり動けなくなる。
「これで終わりね」
みくは日本刀を振り下ろす。
「なに!?」
衝撃音とともにみくの持っていた日本刀が根元から折れる。何が起こったのか確認すると、子猫は網を切り裂いて外に出ており、尻尾が光り輝きキレ味鋭そうなブレードのようになっていた。
「どうです? 僕のテイルブレードは?」
あ、本当にブレードなのね。てか、テイルブレードってネーミング安直だな、などと緊張感のないことをオレは考える。
「もうそろそろ『時間』ですよね?」
「それはお互いさまでしょう? ……次、会うときは永恒とかこと併せてアンタも殺してあげるわ」
「怖い怖い。あなたのような美しい人がそんな物騒なことを言うもんじゃないですよ」
「猫に美しいと言われてもいまいち嬉しくないわね」
そう言うと、久遠みくも藪の外に消えて行った。
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