第14話

「シン、何しているの?」

「ジュリ、何でここに?」

「貴方の帰りが遅いから心配になって来たの」

「大丈夫だよ、ちょっと君の事に付いて話をしていたんだ」


それを聞いてジュリは、前に進み出てミヤギを見る。


「ミヤギ!貴方、まだ私を追うつもりなの?」

「イヤ…追わないさ、我が社は君への捜索は打ち切ったんだ」

「ならば、今直ぐに消えなさい。さもなくば…」


ジュリの体から見えない大気が発生しワンピースや長い髪が揺れ出す。右手には不思議な発光が浮き上がった。

右手を伸ばして発光が発射されると、近くにあった駐車場のコンクリートの壁に


ボンッ!


と大きな音を立て当たり、砂煙の中…壁に大きな穴が開いた。


「辞めろジュリ!」


そう言われるとジュリは、落ち着きを取り戻す。

大きな物音ともに付近の民家から犬が吠え、気になった住宅から明りが灯される。


「今後、彼に無断で近付いた場合、私が貴方を許さないから」


ジュリはシンの手を引っぱり


「行きましょう」


と、一声掛けて暗闇の中を去って行く。

誰もいなくなった闇の中、ミヤギは1人残っていた。


「電子波動に空気弾か…、次は何が出て来るんだ…?」


もしかしたら…とんでも無い者を相手にしてしまったのかもしれないと、そう心に感じてもいた。



シンとジュリは手を繋いで一緒に歩いて行く。


「ところでジュリ、どうやって僕の場所が分かったんだ?」

「フフ…どうしても知りたいなら貴方に話すわ」

「まあ…ちょっと知りたいね」


~約30分程前…


図書館から借りて来た本を全て読み終えたジュリは、貸し出し用のバックに本を戻して時計の針を見る。時刻は夜9時を指す所だった。彼女はシンが好きそうな料理を作り待っていた。


(遅すぎるわね…)


何処に居るのだろう…と思ったジュリはPCの電源を入れてモニターに手を付けると、そこからシンのWBCのコードを拾い居場所を突き止める。


(見つけた…ん?)


ジュリは付近に居る者のWBCも感知して、そのコードを読み取るとタナカ・コーポレーションに関係する人物と情報が出た。


(タナカ・コーポレーションがシンに直接近付いて来たのね)


ジュリは急いでマンションの部屋を出る。廊下を走りながらメインシステムのリミッター解除を行う。その瞬間、ジュリの脚力が倍増された。通常の人間の数倍もの速さで走り出す。

目の前に非常階段が見えて来ると、それを飛び越えて壁を上手く蹴って落下速度を緩めながら地面に向かって着陸を目指す。



塾帰りマンションの裏側にある自転車置き場から、マンションに向かおうと仲良く歩いていた女子中学生2人組…。彼女達は仲良く楽しそうに話をしながら歩いていた。


「そう言えばさ…ウチの隣の人、最近…恋人が出来たらしいのよ」

「え~…まさか、あんな人にも恋人が出来るの?」

「今日ね学校から帰って来た時にママが言ってたのよ、相手かなり美人らしくて2人で手を繋いで出掛けて行ったって」

「へえ~結構やるじゃない」


彼女達が話をしている中…突然、目の前に着地した白い衣服の少女を見て


「キャッ!」

と、驚いた。



少女は周りの事など気にせず瞬時に走り出す。

突然現れて、人間並とは思えない速さで走り出した少女に女子中学生は唖然として見ていた。


「今の子…上から降りて来たよね…」

「でも…この辺には階段なんて無いよ…」


女子中学生の2人はマンションを見上げるが人が降りれるような場所は見当たらなかった。



市街地で路肩に駐車しているパトカーがあった。


「それにしても、今日の昼間の捜索って何だったんでしょうね…結局何も分からないまま打ち切られてしまって…」

「俺に聞くなよ、全て上の方で勝手に決めて動いただけなんだし。俺達は指示に従っただけだから…」


退屈そうに話をしている2人警察官が乗っている横を、白い物が凄い速さで横切った。


「え…?」

「どうしたんだ?」

「今…何か白い物が横切ったぞ」

「気のせいだろ…それとも疲れているのかもしれないぞ?」

「そうなのかな…?」



平均時速約300kmの速さで走るジュリ、彼女が走った後、音速の状態で軽いソニックブームのように風が巻き起こり、付近にいた人達は突然の疾風に驚いた。

前方に交差点が見えると彼女はジャンプして信号機の上に乗り、大型トラックが近付くと、ジャンプしてトラックの上に乗り歩道橋の近くへと来ると、さらにジャンプして歩道橋の柵へと飛び移る。

驚異的な脚力と跳躍を見ていた周囲の人達は唖然として見て、WBCのカメラを使って彼女を撮ったりした。


(目的地まで、あと200m…)


ジュリは歩道橋の柵の上からそのまま走り出し、前方のビルへと向かってジャンプする。建物の窓ガラスに足を引っ掛けながら、屋上へと跳び上がって行き屋上まで行くと、そのまま降下し、建物の非常階段を上手く利用して着陸する。シンとミヤギが居る場所まで近付くと、リミッターの制御を戻して2人の居る場所まで近付いた…。


~現在…


一連の出来事を聞いたシンは、少し悩んだ様に頭を抱えてからジュリに向かって言う。


「なぁ…ジュリ、あまり世間の目に付く様な行動は控えてくれよ」

「分かった気を付けるわ。でも…貴方も私を一人ぼっちにさせてはダメよ。今度無断で誰かと会う事があったら、その時はロボカーを使って強制的に帰還させますからね。あと…私以外の女性とイチャイチャした場合は覚悟してね」

「どうするつもり?」

「さっきの空気弾を貴方に放つわ」


微笑みながら言うが…ジュリの場合は必ず実行されるので、シンとしては少しばかり怖かった。出来るだけ仕事が終わったら帰宅するようと考えた。その方が寿命が長く続きそうなので…。

2人が話をしていると、前方に男性が現れて少し震えた様子で近付く。


「き…君、今さっき歩道橋の上を走って行って、ビルの上を飛んだよね?ほら…写真もあるよ」


男性は、WBCの画像に納めたジュリの写真を見せる。

それを見たジュリが付近にいた猫を見つけて、相手に気付かれない様に写真の前に軽く手を擦り付けると、画像はジュリから猫に変わる。


「あら…可愛い猫ちゃんね」

「え…ええェー?」


男性は驚いて自分の納めた画像を見ると猫が歩道橋の柵の上に写っていて、ジュリの姿は消えていた。男性は慌ててジュリの写真を検索するが…保存した筈の写真は見当たらなかった。


側にいたシンが小声で「おまえな~…」と、少し呆れた声で言う。


「あんなのに構ってたら遅くなるわよ」


2人はさらに歩き、マンション近くの市街地付近へと近付く、すると男性の警察官が1人周囲を見渡していた。


「アンドロイドの警官よ…あの人…」

「へえ…そうなんだ」


と、2人が話していると、相手もこちらに気付き警官はジュリを見るなり近付いて来た。


「失礼ですが…そちらの方、識別信号が確認されませんね、まだ未登録なのでしょうか…?」

「最近届いたばかりなので…」

「そうでありましたか…あと、つい先程リミッター解除したアンドロイドが居まして、情報から、そちらの方の服装に似ている情報が入ってます。少し話をしたいので、ご同行願いますか?」


その瞬間、ジュリが相手の顔に手を当てる。


「邪魔よ…あちへ行ってなさい」


軽く突き倒す様に押さえると、警官アンドロイドは後方へと数歩ヨロヨロ…と後退りする。ジュリはシンの手を引っ張って歩き出す。


「おい、良いのか?警官アンドロイドに手を出したりして…」

「あいつには、もう私達の記憶は無いわ。ほっときましょう」


しばらく硬直状態だった警官のアンドロイドは再び動き出すと、不思議な踊りを始める。


それを見ていたシンは、少し戸惑いながら

「おい…やり過ぎだろ?」

と、呟いた。


「私は急いでいるのよ、それとも貴方ここでする?私は構わないけど…」

「するって…何を?」


ジュリは両手でスカートの裾を少し捲り上げ、その下にある純白のショーツが現れる。


(おい、何考えているの、ここじゃマズイよ…)


「私、我慢出来ないの…。リミッター解除の反動で、気持ちが高ぶっちゃって…早くして欲しくてたまらないの…私のアソコを触って見て…」


シンは言われる通りにスカートの中に手を入れると、ジュリの股はベットリと濡れていた。


「リミッター解除すると、毎回こんな感じになるの?」

「分からない…今回は初めて使ったから…慣れると気持ちは落ち着くと思うわ」

「と…とりあえずマンションに戻ろう」

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