第15話 細マッチョなぞ存在しない
……細マッチョ…この表現はおかしい。
そもそも、マッチョとは“男性らしさ”を表すスペイン語 macho(マチョ)「雄の〜」という形容詞が変化したもの。 溢れ出る筋骨隆々とした体躯を指すのだ。
だが、細マッチョとは一体これ如何に?マッチョとは名ばかりで痩せすぎて筋肉が浮き出ているだけではないか。
ガリガリなのにマッチョを名乗るなどけしからん。成敗してくれる。
と、僕がバットを構えたところ、駅の方からヨダレを垂らした警察官が複数人こちらに駆けてきた。
あ……ヤバイ。この状況はヤバイ。
僕は咄嗟にバットをしまい、両手をあげる。だが、キモい奴は何か勘違いした様だった。
「ワハハ、ローランよ。戦う前から降参か?この美しい体の俺に恐れをなしたかぁ?」
言ってろ。どうなっても僕は知らない。
高笑いをするキモい奴の背後に焦点がハッキリしない警察官が多数集まっている。皆、一様に視線がアサッテの方向に向いて正気ではなさそうだ。
そのヤバイ警察官の一人がキモい奴に話しかける。
「オイ!駅ヲ爆破シタ奴ヲ見ナカッタカ?」
「ぬぅ?何だ貴様。人間如きが私に……」
あ、バカ。
「アッ!シツモンニコタエナイ!公務執行妨害ハ死刑ダ!」
「死刑ダ!」
「死刑!」
警察官が一斉にキモい奴を銃撃した。凄まじい破裂音だ。
「ギャー!」
「死刑!」
「死刑!」
「死刑!」
「死刑!」
キモい奴の悲鳴が聞こえる。
「ギャー!」
「死刑!」
「死刑!」
「死刑!」
「死刑!」
何発玉を撃ち込まれたか分からない。オイオイ、警察官の1人はマシンガンとか持ってるぞ。あ、ロケットランチャーを持ってる奴もいる。ここ、本当に日本か?
「ギャー!」
「死刑!」
「死刑!」
「死刑!」
「死刑!」
先程から銃の乱射が終わらない。キモい奴もしぶといなぁ。大方、自分の体を遺伝子改造して耐久力でも上げたんだろう。簡単に死ねないのは哀れだ。
僕は警察官の射撃の的になっているキモい奴を残して、その場を立ち去ることにした。
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