第9話 魔物に人権はない

 特急列車は快適だ。僕は駅で買った黒い稲妻を頬張り、快適な旅を楽しんだ。

 僕が窓を眺めて景色を見ていると、売り子がカートを引いて近づいてきた。


「お弁当にお茶は如何ですか?」


 お弁当か。暗黒スパゲティを食べるためには少し控えた方がいいかな。

 

「お弁当は入りませんか?でしたら、お土産もありますよ。冥土の土産がね」


 おや?物騒なことを言うな。と、売り子の顔を見ると、先ほどリッチ・ブリッジであった人権男がいた。何と、売り子に化けていたのだ。


「嘘を吐いて人を騙すのは人権侵害だぞ!ローラン。駅で待っている仲間たちが可哀想だろ!」


 知るか。


 そもそも、僕は鈍行でアンシエント・フェイマス・ハウスに行くなんて言ってない。勝手に勘違いしたのはお前たちだ。


「お前の配慮が足りないから、皆が悲しむんだ。もっと周りを考えろ!自己中野郎め!」


 何だかダンダン腹が立ってきた。何で好き勝手に言われなくてはいけないのだ?僕がバットを手に取り、強く握ったところ、人権男が色めきだって騒ぎ始めた。


「ワーワー!そうやってすぐ暴力に訴える!人権侵害はんたーーい」


 “ボグン!“


 バットで横っ面を引っ叩いてやった。快活な音がして、人権男はその場に倒れ込み、気絶してしまった。


 まったく、煩い奴だったな。魔物に人権はないぞ。

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