第3話 新七つの大罪

 何だろう、この違和感。僕はコイツらに似た奴らを知っている。


「新しい物を生み出す企業に対して、あなたは何を産みましたか?……ローラン?」


 僕とニューポートサイドにいる変態コスプレイヤーと間違えている。もしかして、敵なのだろうか?


「お初にお目に掛かります。我々は新七つの大罪を司る魔王の七人です。アスタルテ殿たち四天王を倒した勇者ローランを倒すため、大魔王様が私たちをこの地に遣わしました」


 七つの大罪!……ってなんだ?僕は咄嗟にWikipediaで調べる。


『七つの大罪とは週刊少年……』


 これは違うな。もう一つのWikipediaを調べる。


『七つの大罪とは、キリスト教カトリック宗派による人間を罪に導く可能性があると見做されてきた欲望や感情のことを指すものである。その内訳は「傲慢」、「憤怒」、「嫉妬」、「怠惰」、「強欲」、「暴食」、「色欲」の七つに分類される』


 何と、これまた日本なのにキリスト教か。僕はこの世界観に少しばかり嫌気がさしてきた。


 そんな呆れを隠せない僕に七人が名乗りをあげてきた。


「ふふふ、ローランよ。私は新七つの大罪が一人、”環境汚染“のゼパル!ダイオキシン、ダメ、絶対!」

「俺は“遺伝子操作”のバエル。禁忌を冒すと俺みたいになるぞ!」

「私は”過度な富裕“の元国税局長の田中と申します。脱税は大罪ですよ」

「ふふ、我は“不平等な貧富”のザガン。世界には恵まれない子たちが溢れている、お前はこの現状をどう思う?」

「私は“違法薬物”のモロク。生贄にするのは自分じゃないよ?自分を大事に!」

「俺は“倫理を冒す実験”のマルコシアス。科学の発展には犠牲は付き物…だが、それでいいのか?」

「最後は私だな。“基本的人権の侵害”のベリト。人は人たるべきなのだ。そう思わぬか?」


 ……あれ?Wikipediaと全然違う。何言ってんだ?コイツら。


「我ら揃って、『新・七つの大罪』!」


 七つの大罪と言っているが、言っていることは至極まともだ。それよりも、今あたまに”新“って付けなかったか?


 僕はWikipediaで”新七つの大罪を調べる。映画の情報が出てきたが、これは違うだろう。仕方がないので、今度はGoogleで再検索すると、以下文が出てきた。


『新七つの大罪とは2008年、バチカンのローマ教皇庁から発表された現代に合わせた七つの大罪である』


 何と、時代に合わせてリニューアルしてる。魔物の世界も大変だ。もしかして、SDGsエスディージーズを司る魔物もいないだろうな。


「ぬ……流石はローラン。SDGsエスディージーズを司る魔物は選定中だ。大魔王様はいつも最新動向に気を掛けているのだ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る