第2話
インターホンの音が聞こえてきた。
再び目覚めた千晴が見た時計の針は、三時を指している。
渥美家の人間は今、千晴以外
千晴は、ベッドから静かに体を起こす。
その間も、インターホンは止まない。
立ち上がった千晴は、パジャマ姿のままで部屋を出た。
先ほど起きた時よりも、千晴はさらに地に足がついていないような感覚。
千晴は階段を降りると、一階のリビングにあるドアモニターへと向かう。
「はい、なんですか?」
長方形のモニター越し。千晴は
黒髪に通った
千晴を突然、激しい
『あの、俺、冴島です。渥っ……、千晴くんのお
紘は
(どうしよう……、出ちゃった……。今さら
千晴が
『……渥美、だよな。入れてくれないか?』
「……ちょっと、待って。……今、開ける」
気の乗らない足取りで玄関へ
千晴が
「突然来て、ごめん。昨日……、渥美がすぐ帰っちゃったからさ」
紘はスクールバックを肩に掛けたままで、千晴を見つめている。
千晴は自分の
それになんだか、体も火照っていく。
昨日の
好きな人が自分の部屋にいる
むしろ今、千晴は
それに紘が話したい内容だなんて、千晴は
昨日、千晴があの場所に、あの告白の場面にいたこと。
そう、その口止め。
そうでなきゃ、彼がわざわざ風邪で休んだ「ただの同級生」の元に来る理由もない。
彼にとって千晴の
悲しいかな、千晴と紘とはそういうぐらいの
千晴は顔を
(「誰にも言わないよ」、……軽いかな?
それとも「何も聞こえなかったよ」とか?)
千晴は答えをいくつも用意しては、
紘が、再び口を開いた。
「結果が、出たんだろ?」
(また『結果』?)
今朝にも、母が言っていた。
千晴は理解できないままに、
「……どうして、ウチに?」
紘は目も
「『再検査』。昨日、結果が出ただろ」
けれど千晴は、彼の言葉の意味を分からずにいた。
千晴はたまらず視線を逸らす。
ベッドの中へと身を
「ごめん。まだ、風邪治ってないんだ……。か、帰ってくれる?」
千晴はそう伝えるも、彼はその場を動こうとしない。
「ほんと、ごめんだけど、帰って」
紘を
ベッドに上がった千晴は、紘に背を向けたまま毛布を
紘が、静かに
「分かった」
部屋に、沈黙が流れる。
千晴は顔を
千晴は気まずさを拭いきれない。
正直、紘と話を続ける余裕も理由も、千晴にはない。
たまらず、千晴は声を
「あっ、あの! もう、帰って!」
するとなぜか、千晴を
「大丈夫だ。……大丈夫」
恐る恐る、千晴は顔を上げる。
目の前に立った紘の
紘の指が、千晴の頬に
(な……に……?)
突然のことで
『もう大丈夫だ』
『分かってる』
『俺は、
『ただの
その言葉に、千晴の
(『発情期』……? 何言ってるの……?
そう言いたいけれど、まるで言葉が口の中で
『
紘のその一言で、千晴の
(『Ω』……? 僕って『Ω』なの……? なんで、そんなこと……)
頬に温かい
それから紘の厚い
千晴のファーストキス。
夢に見ていた、
キスの
(なんで、僕、冴島くんとキス……?)
途端に、千晴は
涙が込み上げた。
(冴島くんには彼女が……、長部さんがいるのに……)
下唇を
目を
「
「な、何言っ……」
紘の唇が、千晴の
(待って待って。これって、もしかしなくても『あれ』だよね。『うなじ噛んじゃうやつ』だよね? 『
千晴は両手で
(ダメダメダメぇ!)
紘が
「ねえ、俺の可愛い番。それ、外してよ」
だけど、千晴には
紘のことはもちろん好き。
何がどうなって自分が『Ω』だなんてことになったのか、正直、今も理解できない。
けれど紘が『α』だとして、このまま彼に噛まれれば、好きな相手と『番』になれる。
それでも、彼は……?
紘が自分と『番になる』ということは、彼にとって『本当に好きな相手と番になる』と言えるのだろうか……。
紘の言う通り、今、自分が『発情期』だとして、彼は
千晴は
(ダメだよ。
千晴は絶対に首元を外すまいと、両手の力を強めた。
その千晴の手の
「……ダメだってばぁ」
千晴はさらに手に力を込める。
「可愛い声で言ってもダメだよ。外してくれないと、番になれないよ?」
「やっ、ダメぇ」
千晴は「この手だけは離すものか」と耐え続けた。
「ダメったら、ダメなの!」
その時再び、千晴の視界が暗くなる。
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