眠れる部屋のΩ(オメガ)くん
水無 月
第1話
『十日ぶりに
高校二年生の
雨は気まぐれに、
天気に
千晴は目の前で滝のように落ち続ける雨を
ナイロン製のスクールバッグは
千晴は
千晴の
雨は、アスファルトの
小さく溜め息を
張りついたままの制服に、千晴の体は
茶色がかった髪も濡れきって、長い
千晴は手にあるミニタオルで
正面には小さな公園。
千晴は不意に
花は白に青そして
いつもと
その時、目の前の
見上げてみると、ところどころに青空まである。
けれどすぐさま、空を
千晴から
正面に見えている公園の中央。
そこには、片手に
どちらも、千晴と同じ学校の制服だった。
千晴は濡れたままのスクールバッグを
理由は、赤い傘の女子の隣にいる男子が、千晴の初恋の相手「
木製のベンチはあるけれど、この雨で濡れているのだろう、二人が
女子はブランコの手前で止まると、紘へと
赤い傘の女子の正体は、学校内で一番人気と言われている「
彼女を一言で表すなら、美人。
千晴と紘と同じ二年生ながら、生徒会長を
長身の紘と並ぶと、まさに
二人とは
どうしようもなく切なくて、悲しくて、千晴は胸が
その時、
「話って?」
低くも
ためらいがちに、真綾が
「うん。……こんな雨の日に、ごめんね」
真綾は
千晴は
バッグを抱える千晴の両手は、自然と力が入った。
「私、冴島くんのこと、好きなの」
その時、千晴の
雨が、降り始める。
真綾は持っていた赤い傘を開くと、紘を中へと
千晴は不意に後ろへと
二人に背を向けるように、千晴は走り出す。
体が重く感じたのは、雨を
家に着いた
四つ上の姉が、玄関先で
二人に
千晴は、ベッドに倒れ込む。
毛布に
涙が雨に
目の前へと
「ふっ、うぇっ、んぐ、ううう……」
言葉にならない声たちが、再び千晴の涙となって零れていく。
忘れたい赤い
体も顔も
『
それは心から全身までをも
高校に入学したての頃は、千晴は冴島紘と同じクラスで隣の席だった。
彼は
すでに背は高く、黒髪と黒い瞳が彼の顔の作りのよさをさらに
千晴も当時、彼のことは「同級生」という
ある日の休み時間。
紘は友人が一緒にいるにも
不意に
どうしても頭から離れなくて、千晴は彼が同性であっても、
千晴は、毛布から顔を出す。
ベッドの
テーブルの上には、
姉からいつも
家族以外には
紘を、同性を好きになったのは、姉の
今となっては、分かる
* * *
柔らかな
「あ、起きた? あれだけ濡れたから、ほら熱が出てる」
母が
けれど千晴は、頭は
「とりあえず今は、薬
千晴は、久しぶりに母に頭を
母のその変わらない姿に、千晴は少しだけ身も心も楽になった。
* * *
ベッド
夜だと思っていたら、カーテンの外に
千晴は軽くなった体を起こすと、パジャマ姿のまま一階のリビングへと向かった。
キッチンでは、母と父が仲よく朝食の
これは、渥美家の
千晴に気づいた父が、優しく「おはよう、気分はどう?」と
千晴は自然に、目線を
「おはよう。もう、大丈夫」
失恋後に見る、
千晴はなんだか
「今日は学校に、お休みの
母はそう言いながら、眉を
「もう
千晴が薬は必要ないことを
「結果が出たんだから、
なんの結果? と
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