俺を……俺達を見てくれ!
みやび
俺達を見てくれないか?
俺達はいつも三人一緒にいる。
そして、高い所から鉄の塊が動く姿や人間が歩く姿を観察していた。
「あーぁ、危ないなぁ。」
「どうした?
そこに居たのは、腰の曲がったお婆さん。
腰が九十度程曲がり、首も思うように上がらない様子だった。
その為、俺達の方を見ずに横断歩道を渡ろうとしていたのだ。
だが、近くにいた若者に助けられ、難を逃れた。
「俺達は高い位置にいるからなぁ。」
「そうだな…俺達の方が下に行ければ良いんだけどな。」
「ここじゃ無い所だと、いっつも寝そべってるヤツがいるみたいだぞ?」
「そうなのか?」
「ああ、ただ いつも踏まれて痛いらしい。」
「ハハハ」
俺は乾いた笑いが出てしまった。
踏まれるのは好きじゃない。
たまに鳥が俺達に止まるが、それも苦手だ。
「お前らは良いよなっ!いつも皆から注目されてさっ!」
「どうしたんだよ、
俺と
「俺がスポットライトを浴びた時なんか、「急げーっ!」って感じで、鉄の塊も人間もスピード上げるんだぜ!?いや!!止まれよっ!?何で止まらない!?」
「分かるわ、それ。俺がライトを浴びた時にもあるし。」
「それこそ危ないし!!」
「だろ~?鉄の塊が無かったら、歩き出すんだよな。いやいや、向こうから来てるし、て思う。」
「他の人もやってるからじゃないか?皆でやれば怖くない、みたいな??」
「お前は良いよなっ!何も無さそうでよ!!」
「いや、あるぞ?最近俺がライトを浴びても動かないヤツが増えて来てな……。」
「そう言えば、そんな事もあったな。」
俺が
「言ってるそばから、これかよ……。」
「あいつ!?危ねぇぞ!?」
俺が呆れていると、隣で
パッパーッ!
耳が壊れるかと思う音に驚きながらも、若者が乗っていた鉄の塊より大きい鉄の塊と若者はスレスレになりながらも、何事も無くすれ違った。
「心臓にわりぃ……。」
「何で俺達の方を見ないんだろうな?」
「見て貰えなきゃ、俺達は何の為にいるんだろうな。……て、おいおい!!」
「今、俺!!お・れっ!!俺がライトを浴びてるのっ!!見ろよ!?」
手に持っている小さな鉄の塊を見続け、そのまま歩いていた。
「俺を見ろよ!!あー!もう!何で見ないかな!?」
「あ、次は俺か。」
それでも見ない女の子。
キキーーーッ!!
鉄の塊からその音が鳴ると、道から煙が出てきた。
『危ねぇだろぅがっ!!』
『す、すいません!!』
何とか止まれた鉄の塊から人間が顔を出して、女の子に怒っていた。
「だから、俺を見ろっつったじゃん!!」
「まー、俺達の声は向こうには届かないんだけどな。」
そう言う青井は少し哀しそうだった。
「見られ無いのに、俺達がここにいる意味ってあるのかな。」
そんな青井につられ、俺までしんみりとしてしまう。
「俺達がいなきゃ、ここは赤く染まるんぜ!?いるから、犠牲がないんだろ!!だから、俺を見ろー!!俺達を見ろー!!!」
「お、あの子いい子じゃん。」
俺は今、
「おお!ちゃんと止まってるじゃねぇか!!大きくなっても、そのままで いてくれー!!」
テンションが上がり過ぎた浅黄に苦笑を漏らしていると、俺の番になり、次に青井の番になった。
「ははっ。本当にいい子だな。」
青井は眩しそうに目を細めながら男の子を見守る。
男の子は
その様子に俺達は顔を見合せて笑い合い、男の子を静かに見守った。
──────────
外に出ると見掛ける「信号機」。
色々な形が最近はありますね。
地域によっても違うのでしょうか?
皆様の「信号機」はどんな「信号機」でしょう。
「信号機」のお話でした。
──────────
俺を……俺達を見てくれ! みやび @-miyabi-
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