第136話 色々考えたが

 私の母親は料理が下手だ。

 とにかく出汁とか下準備的なことを知らない。

 かつ丼とか、スーパーのとんかつと玉ねぎを卵でとじて、ご飯に乗せるだけである。

 つまり味が無い。


 その味の無いかつ丼を食べながら考えたのだ。

「白いご飯に一番合うものとは何ぞや?」


『おかず』というものは違う。

 それは、ご飯のために存在していながらパンにも合ってしまうからだ。

 概念が異なるというか…耐水化物の味方というか…白いご飯のためだけに存在しているわけではないような気がする。


 じゃあ素材というのは?

 例えば卵、いや完全に違う、ご飯の為だけにが重要なのだ。


 味の無いかつ丼…

「あっ、味噌汁?」

 いや…味噌汁はスープだ、だが近い。

 シックリこないけど、考え方は間違ってない。


 ご飯に合うものは、ご飯のとなりで、ご飯を持ち上げねばならない。

 だが…そうするとカレーでもアリなのか?

 いやカレーはご飯を超えてしまう。

 もっとこうシンプルでなければならない。

 主役であってはならないのだ。


 味の無いかつ丼を食べ終えて考えた。

「例えば、僕は何と比較して、かつ丼を物足りないと感じたのか?」

 塩っ気がない。

 調味料が足りないから個々の味しかしないのであって、まとまらないのだ。

 調味料とは個々の素体を結びまとめる大事なもの…

 調味料…醤油…塩…味噌…

「成分だ‼」


 そして行き着いた答えが『ふりかけ』である。

 調味料に近く、料理ではない、素材に近く、料理にはなり得ない。

『ふりかけ』である。


 味は何でもいい。

『ふりかけ』こそ『白いご飯』のために生まれた存在ではないか。

 白いご飯を美味しく食べさせるために生まれた存在。

 究極の引き立て役であると結論をだした。


 今日は、よく寝れそうだ。

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