第31話 停電

 原発の街。

「停電って…何年ぶりだ?」

 ホテルでのバイト中、休憩時間に停電。

 最初はホテルだけかと思った。

 どうも違ったようで、市内2000棟…

「まぁまぁの数じゃないか…」


 大学生のバイトと話す。

「このまま客が来たら、このホテルどうするんだろうね?」

「暖房も効かないですよね」

「風呂も冷めるだろうしね…それ以前にエレベーターもバッテリーがいつまで持つのか…」

「こういうときホテルって、どうするんですかね」

「僕なら…客に連絡して、別のホテルを手配するとか、まぁ今日は泊めないよね」


 内心、思っていたのだ。

(面白いことになったぞ…)


 ラブホにいた時もそうだが、僕はトラブルが好きだ。

 俄然、やる気がでてくる。


 真っ暗の廊下、エレベーター、風呂場…最高ですか?

「最高です!!」


 その気持ちを抑えて、フロントの人と話す。

「大変なことになりましたね…お客様への対応、大丈夫ですか?」

「連絡がつく人はいいのですけど…全員とは…なかなか」

「ご苦労さまです」

「いえ…清掃も電気無いと大変ですよね?」

「えぇ、まぁでも…やれることはやっておかないと」

「ご苦労さまです」

「そちらこそ」


 もう…一晩中停電してればいいのに!!


 残念ながら…夜には復旧したようです。

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