第39話パスタを作りました

 パスタとは、なんてあえて説明するまでもないが、日本人としてはおなじみの料理である。

 小麦粉を練って麺状にしたものを茹でて食べるという簡単料理だ。

 市場で小麦粉を売っていたので、大量に買い込んだのである。

 これを使って作るとしよう。


「まずボウルに小麦粉を入れ、塩と卵を落としてかき混ぜる」


 しばらく混ぜていると固まってきた。

 まとまりやすいように水を足しておこう。

 するといい感じの柔らかさになってきた。

 少し休ませた方が切りやすいので、このまま置いておく。


「と、休ませている間に……精霊さん、丸い棒と平らな板を作ってくれ」


 土の精霊に呼びかけ、岩の棒と板を生成してもらう。

 麺棒とまな板の完成だ。

 生地をまな板の上に置き、麺棒で伸ばしていく。

 いい感じに伸びてきた所で今度は折りたたみ、細めにスライス。

 広げれば麺の完成である。


「細長いにゃ」

「これが パスタの生地さ。これを茹でる」


 塩と共に鍋に入れて茹でることしばし、麺が湯の中で踊り始めた。

 それを掬って食べてみる。……うん、丁度いい固さだ。


「雪だるま、氷水を頼む」

「わかったのだ」


 ボウルの中に氷水を出してもらい、パスタを氷水で締める。

 こうすると麺にコシが出るんだよな。

 あとはフライパンに入れ、先ほど作ったソースと絡めながら炒めるだけで完成だ。


「よし、出来たぞ」


 真っ赤なソースに絡んだパスタが食欲をそそる。

 マグマパスタ改、と言ったところかな。


「美味そうにゃ!」

「待て待て、タバサが待ってるだろ。一緒に食べよう」

「そだったにゃ!」


 って忘れてたのかよ。

 仕方ない奴である。


「ほら、運ぶぞ。二人とも手伝ってくれ」

「にゃ!」


 雪だるまは皿を頭に乗せ、クロは魔力で浮かせ、タバサの待つテーブルへ運んでいく。


「おやおや、いい匂いだねぇ! ん、なんだいその食べ物は? 初めて見るよ」

「パスタという食べ物だにゃん!」


 得意げに鼻を鳴らすクロ。

 お前もまだ食べた事ないだろうが。


「まぁ食べてみてください。気に入ってくれれば幸いです」

「ユキタカの料理は世界一にゃ! きっとすごく気に入ると思うにゃ!」

「ほう、それは楽しみだ。それじゃいただくとしようかね」


 タバサはフォークでパスタを巻きつけ、口に入れる。

 俺と雪だるまも同様に、クロはそのままかぶりついた。


「んにゃ!? こ、これは美味いにゃあっ!」

「初めて食べる食感なのだ! しかもソースとの相性も抜群なのだ!」

「ほう! つるつるとした喉越しに甘辛いソース! こいつは絶品だ!」


 三人から絶賛の声が上がる。

 タバサも気に入ってくれたようで何よりだ。

 辛さが足りないかなと思ったが、受け入れて貰えてよかったよかった。

 俺も一口……うん、美味い。

 パスタは一人暮らし時代によく作ってたが、手軽で美味いんだよな。

 しかも色んな味付けを楽しめるので、飽きにくい。


「美味いにゃ!」

「とても美味なのだ」

「うんうん、美味しいねぇ」


 結構たくさん作ったが三人の食欲はものすごく、あっという間になくなってしまった。

 やはり生パスタは美味いな。また作ろう。


「ふぅー、食べた食べた。満腹だよ。ありがとうユキタカ、美味しかったよ」

「それはよかったです。チームメイトさんが来た時の事を考えてかなり多めに作ったつもりでしたが、ぺろっと食べちゃいましたね」

「ははは、あいつらもこんな美味いものを食い損ねて運がないねぇ」


 そう言って笑うタバサだが、その目には不安の色が見て取れた。


「……心配ですね」

「なぁに子供じゃないんだ。そのうち来るさ。……まぁでも明日になってこなかったら流石に考えないとね」


 俺はタバサの言葉にうなずいて答える。

 ここまで遅れたら、いくらなんでも何かあったと考えるのが妥当だろう。

 とはいえ俺がいくら心配しても仕方ない。

 今日は寝るとするか。


 夜が明けて翌日、目が覚めるとタバサがいなかった。

 窓から顔を出すと、下の階で何やら声が聞こえる。


「うちのチームメイト、まだ来てないのかい!?」

「えぇ、先日も宿には参られませんでしたが……」


 どうやら不安が的中したようだ。

 まだタバサのチームメイトは来ていないらしい。

 こりゃ何かあったな。


「うにゃ、ユキタカおはようにゃ」

「ユキタカ殿、おはようなのだ。ところでそんなに慌ててどこに行くのだ?」

「ちょっと下の階にな!」


 タバサには困ってたところを宿に泊めてもらった恩がある。

 俺に出来ることがあれば、協力したい。


「おやユキタカ、早起きだね」


 一階に降りた俺に気づいたタバサが声をかけてくる。


「あぁ、まだチームメイトは来てないのか?」

「困った奴らだねぇ。サンドリザードが事故ったか、はたまた別のトラブルか……」

「よかったら俺に協力させてくれないか? 部屋を借りた礼をしたい」

「ユキタカ……そりゃあんた、ありがたいけどさ……」

「決まりだな。というわけで探して連れてくる」

「ちょ、ユキタカ!?」


 追いかけてくるタバサに手を振り、俺はヘルメスに跨る。

 何があったかわからないが、世話になった恩を返す時である。

 彼らを見つけて連れて帰るとしよう。

 俺は荒野に向け、ヘルメスを走らせるのだった。

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