第4話 あの癖、似てる!
「真由美さん、見た?新しい部長さん?」
出勤早々、同じ派遣社員の小池明美がロッカーに駆け込んできた。
「え、来たの?」
制服に着替えていた真由美も「感心はない」ものの、イケメンかどうかは気にかかる。
「来た、来た。でもね、なんか冴えないのよ。メガバンクの銀行員っていうから、バリッとしているかと思ったら、違うのよ」
彼女は「銀行員は嫌いだ」と言っていたのに、ぼやくことしきり、残念そうに肩を落としていた。
「明美さん、銀行員は嫌いじゃなかったの?」
「そうなんだけど、そうは言ってもさ、いい男ならドキドキしちゃうじゃない。でも、冴えないのよね、あの顔…」
「現金な人」、明美はよく言われるが、やはり、その通り。真由美はクスッと笑ってしまった。
「何よ、その笑いは」
「え、だって」
「分っているわよ、言いたいことは」
拗ねた素振りも可愛いが、切替の早いのも明美の特徴。
「はい、はい、どんな男だろうと私たちには関係ないこと。行きますよ、真由美さん」
「待ってよ、明美さん」
間もなく朝礼が始まり、新しい部長が前に立った。真由美たち派遣社員の席は部屋の隅だから、顔はよく見えなかったが、副部長の「結城(ゆうき)部長は」という紹介で名前だけは分かった。
「どんな声かしら?」
明美が耳元で囁いた。真由美は関心がなかったが、「部長、一言、どうぞ」と言われ、その結城部長が首をクイッと捻った、その仕草にドキッとした。
(あれっ、正也クンと同じ…苗字は「高橋」ではなく、「結城」だけど、似ている、あれは…)
真由美は急に胸がドキドキしてきた。
「それでは朝礼を終わります。今日も頑張りましょう」
「頑張りましょう!」
そして、日常業務が始まったが、真由美は結城部長が気になり、配布物を配りながら、何度もチラチラと見ていた。
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