第2話

 寒さを凌ぐように身を寄せ合う男女を、冬のガス灯がぼんやりと照らし出す。

 空から舞い降りた刹那の結晶が、二人の足元をたちまちに白く染め上げて行く。男に寄りかかるように立つ黒い着物の女は、ふと小さく息を零すと「寒い...」と男の胸に顔を埋めた。


「...こんな風に会うのって、いつまで?私は、こんな風に...逢引みたいに会うのはもう嫌。どんなに酷でも良いから、二人のものって約束された未来があるなら...!」

「静かに。誰かに聞かれでもしたら、明日にでも俺達の関係が公になるだろ。...俺だって、こうやって会うのは嫌だけど、互いの身柄を守る為にはこうするしかねえよ」


 諭すように女を宥めると、男は「...もっとくっつけ。寒いだろ」と女の頭を自らの胸に抱き寄せた。我が身を男に預けた女は、衣越しに混ざる体温に酔いしれるようにその目を閉じる。


「...有難う.....×××...」



 女の唇から零れた言葉は、彼女自身の白い吐息にかき消される。明治の夜に降る小さな雪の子が、女の着物に描かれた白椿に触れて静かに溶けて行った。

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