07. 真夜中は純潔-(1)
優月が不器用にヘアードライヤーで遊んでいる間、俺はベッドの下、トイレ、シャワールーム、ついには廊下まで探しまわる。
「ベルト~どこいったんだ~? Together、返事してくれ~」
無い。
無い。
無い!
どこにも無い!!
こうなったら次の策を講じなければならない。
完全に知らぬフリをする。
電動マッサージャーなんて世の中のどこにでもある。
ご家庭、学校、公共施設、道端、路地裏、草原、火の中、水の中。どこにでも、ある!
だから、逃げ回っているその拍子に変身ベルトはいつの間にか電動マッサージャーと入れ替わっていたのだ。
その作戦で――無理だろ!! 何言ってんだよ!
廊下の赤い絨毯の上で両手両足をつき打ちひしがれている俺を、何組かのカップルが目撃したようだが、そんなことは全く気にならなかった。
こっちはそれどころじゃないんだ。
恐る恐る廊下の探索を終えて部屋のドアノブを握った俺。
あれだけ紙袋を大事そうにしていた優月のことだ、もしかしたら中身を再確認して、俺の小さな、ほんのイタズラ心から来る些細な悪事が
もし怒りに触れているとするならば、俺が出来ることはただ一つ。
この身をもってして誠心誠意、心を込めてご奉仕するだけだ。
ドアを押し開くと、俺が想像していたようなぎすぎすムードではなくむしろイケナイ光景が広がっていた。
セーラー服姿の優月お姉さんが、大きなベッドの端にちょこんと腰掛けて所在なさそうにあちこちを見回し、俺に気がつくなり唇を噛み締めて視線を落とす。
「置いてあったから……着た。おかしく、ないか……?」
優月はやっぱり女学生というには少しお姉さんで、だからこそ自分の意思ではなく、俺の意思で着させられているという事実がそこにあって――。
「大変、良いです! ありがとうございますっ!」
俺は思わず彼女の前に跪いて両手を合わせた。
これがメイド服だったらと思うと悔いが残るが、セーラー服も悪くない。
頭を上げると彼女は丁度、俺の目の高さにあるスカートの裾を握って引き伸ばした。
そうだ、そう。
彼女が今、不自然に素足であるのと同時に、彼女は今、不自然にノーパンなのである。
これは本当に不自然極まりない。
コンビニボックスには下着も売っているのに。
世の中は不思議で不自然だ。
「私こそ……お前には助けられた。感謝する」
存外素直に礼を述べて優月はちらちらと俺に視線を差し向けてくる。
だがそれは無視だ。
俺は今、この状況、この光景を楽しんでいる。
十九年間。
俺はこんなにも、スカートを穿いた女性の前に
「お前だけだ、助けようとしてくれたのは……誰も話を聞いてくれる素振りも無くて、私は……もう存在しないのではないかとさえ思えた」
白い太ももと布地が作り出している深淵に目を凝らす。
深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている
「金も工面してくれたようだし……どうも学生に見えるお前にしては随分な大金だったろう。私とて奴等に捕まればただでは済まないことだけはわかる。だから……」
闇よ、闇を応えてくれ!
意外と生地がしっかりしていて光が入り込まない。良い仕事だ。
「せめて礼になるのなら、その……
よいぞ。
何が?
俺は今、闇との交信に忙しくて……。
「はい?」
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