第13話 -5 ピグミとアマミ
「あの! プレート落ちてました、これじゃないですか!?」
母親の横に立つ、銀髪の小さな亜人の女の子に手渡した。私の頭一個分ほど背丈は小さく、頭から生えたうさぎの獣耳がピクッとこちらに反応した。
彼女の獣耳の中は七色に染色されている。そしてまつ毛の長い、何とも可愛らしいお人形さんのような顔で私を見上げた。あまりの可愛らしさに私は一瞬たじろいでしまった。こんな保護欲に駆られる人は初めてだ。
ちょうどその時、番号と彼女の名前が呼び出された。
「ありがとうお嬢さん、危うく失格になるとこだった」
「いえ、間に合って良かったです」
「一安心したところで、待ち時間に緊張しないですんだんだ、このお嬢さんに感謝してしっかり挑んできなさい」
受験番号のプレートが小さな手から大きな手に渡された。ニッコリ笑い、受け取ったのは背が高く立ち姿もかっこいい端正な目鼻立ちの女の人。中性的だが大人な色気もある。とても子供がいるとは思えないほど……………ん?
「うん! 本当にありがとう、見つかってホッとしたよ。今なら恐れずに立ち向かえそう、いってきます!」
「!?」
手を降りながら駆けて行ったのは私がお母さんだと思っていた人で、残ったのは腕を組み見送る小さな少女。間違っていないか交互に二人を確認した。頭がまだ混乱している。
パニックを起こしている私の様子に気づいて、ペコリと頭を下げられた。
「ピグミ、ママです」
「………た、たたた大変失礼しました!」
「アマミはパパに似てるからよく間違えられる。気にしないで」
やはりこちらの少女のようなピグミさんがお母さんで、モデルのようなスタイルで大人っぽい彼女が娘さんで間違いないようだった。失礼なことをしてしまったのにピグミさんは気にしていないようで、無表情でフィールド内の娘のアマミさんをじっと見ている。
ガタイのいい熊の亜人の攻撃を俊敏に交わし、高くジャンプすると相手の頭に飛び蹴りを食らわし、あっという間に対戦相手をノックアウトした。軽やかで華麗な体さばきの彼女はとても強いように見える。女の子からの歓声がとても多い。それも頷ける。あれだけかっこいいと、思わず私もファンになってしまいそうだ。
「あの子は筋がいいのに極度の緊張しいだから心配で付き添っていたんだ」
謙遜しながら歓声に答える娘さんの勇姿に、母親のピグミさんは誇らしげだ。アマミさんが相手にペコっと頭を下げると、そそくさとフィールドを降り戻ってきた。
「よくやった。実はお嬢さんには朝、宿屋の食堂でもこの子は励ましてもらってるんだ。本当にありがとう。この子は同じ年くらいの友達もいないし良かったら仲良くしてやってほしい」
「こちらこそ! 芽衣と呼んでください」
「芽衣ちゃん……ありがとう! 私はアマミ、十七歳だよ。よろしくね」
目鼻立ちのいい中性的な顔立ちで爽やかな笑顔を向けられると、女の私でも一瞬ドキッとしてしまう。手を差し出され握手を交わす。
「アマミちゃん私も十七歳! 同い年だ、よろしくね!」
親子は一瞬驚いた顔をした。また、私はずっと年下に見えていたのかもしれないと少し悲しくなった。
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