第12話-2 装備を揃えましょう!
大きな建物にオセロットくんが入って行った。広い店内は革製品の胸当てやグローブにブーツ、羽根つき帽子から毛皮のコートと様々に大小の商品がブティックのように並んでいる。安いと言っていたがとても高級そうに見える。
二足歩行のワニが腰を低くして現れた。ガパと口を開けギザギザな歯を剥き出しに笑顔?を向けられた。四肢は普通の人間っぽいが肌に鱗があり、恐竜のような長い尻尾もある。ここまで特徴を持つ亜人を目の前にしたのは初めてで驚いて一歩下がってしまった。
「いらっしゃいませオセロット坊っちゃま。おや、そちらの方はワニの亜人を見るのが初めてとはヒューマンの方ですかな?」
「いや、同じ亜人だ。誰でもそんな狂暴な牙を見せられたら驚くさ。女性用の防着を見せてくれ。比較的軽いやつを」
「かしこまりました」
店の奥に案内され、試着室とソファーのある空間に通された。私は試着室に立たされ、女性の亜人が両脇にスタンバイする。コーヒーを飲みながらオセロットくんは足を組み、ソファーでくつろぐ。
「ではまず、希少種アンゴラスライムから採取した良質な毛皮の防着セットです。雪にも強くこの冬流行のデザインです」
カーテンが閉じられ女性二人にあれよあれよと早着替えさせられた。白くて軽い坊着はモコモコした毛皮の可愛らしいデザインだ。だが鼻が細い毛に刺激されクシャミをしてしまった。
パチッと指を鳴らすオセロットくん。カーテンが素早く締められ次に着替えさせられる。
「ではオーストリッチの革ジャンにショートパンツ、極楽鳥の羽飾りが美しい帽子とブーツ。華麗な残影はモンスターも見惚れることでしょう」
カウボーイハットに派手な羽がつきショートパンツ、ウェスタンブーツの格好はどう見てもガンマンのようで私向きではない。
またパチっと指が鳴る。
「お次はキングオブレザーと評される、スレイプニルのコードバンを贅沢に使ったジャンプスーツ。耐久性に大変優れ、魔法の攻撃も防ぎます」
ピタッとした素材のせいで全身のシルエットがはっきりわかってしまう女スパイのような胸の空いたスーツ。顔から火が出そうなほど恥ずかしいし、貧相な体が浮き彫りになる。
オセロットくんは終始真剣な表情だ。何度も着替えさせられ、惨めなファッションショーが続く。
「フム、ではお次は」
「あ……あの、もっとシンプルなものがいいんですけど」
辟易した私は口を挟み、ついにオセロットくんが吹き出した。
「ハハ、ごめんごめん芽衣。面白くてつい。用意していたものを出してくれ」
顔を崩して笑い、楽しむオセロットくんの背後からワニの店長さんが商品をより大事に抱え、恭しく現れた。
「カプリコーン、ヤギの上半身に魚の下半身をもった魔物から採取しました。最高級カシミヤはタートルネックにさせていただき防水防寒に優れ、下半身の鱗は糸の中に縫い込まれ軽いながらも防具としての強度にも優れております。腰巻マントはフライドラゴンの革、アイテムポケットを備え付けており、ナイフや小瓶くらいのものなら安全に収納出来ます。ブーツは弾力のある妖精の蛹、大変良くお似合いです」
さっきまでと違い、派手さのないシンプルな冒険者スタイル。クルリと回転して動きを確認したら、動きやすい素材で体にも馴染む。モンスターの教科書で見たことあるものばかりで、どれもランクが高い。素材の金額はとんでもなく高額だろう。
「おいくら、ですか?」
「オーダーされたものです。お代はすでに坊っちゃまからいただいております」
オセロットくんを振り返ると、余裕な顔をして自分の尻尾を指で遊び、コーヒーカップに口をつけている。
「オセロットくん、私のだよ自分で払う!」
「櫂を助けてくれたお礼だよ、気にしないで。これでも意外とクエストで稼いでるんだ」
「ダメだよ、それに櫂は私も助けたいって思ったんだし」
「んじゃ早いけど、入学祝い。それか先行投資と思って受け取ってよ、ね?」
頭の猫耳を伏せ、甘えるように上目遣いをされる。猫ユーザーで飼い猫タマの奴隷だった私、こんな甘え方をされてはこのままでは押し負けてしまう。お店の人達もオセロットくんの後ろで懇願するように、お願いポーズを取る。
「う、ぐぅう……あり……ありがとオセロットくん。私絶対、受かって見せるから」
「良かった! 頑張ってね、芽衣」
眩しいほどの満面の笑みを向けられる。プレッシャーがまた私に重くのしかかる。
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