第12話
2月14日。バレンタインデー当日。とはいえ、この日は何もない平日。朝起きても特に変わったことはない。居間に上がって朝食を食べて学校に行くだけだ。目を覚ました俺はトイレを済ませ、顔を洗い、歯を磨き、居間に上がる。そして・・・
「俊彦くーん!ハッピーバレンタイン!!!」
目が覚めて居間に上がったばかりだというのに、早速楓さんからチョコを貰いました。
朝食を済ませた俺は学校に向かった。いつものように駅で明日香と合流。ちなみにアリ姉はもう自由登校で、あとは卒業式に出席するだけだ。そして、さーやんは昨日から仕事でいない。まあ、今日の夕方には戻ってくるようだが。電車の車中、俺は明日香から、
「そう言えば、今日はバレンタインデーだね。トシ、帰りまでにはチョコ渡すからもうしばらく待っててね・・・」
と言われた。
学校では特に何もなかった。普通に授業を受けて普通に昼食を食べる。で、授業が終わったら部活動。いつもの通りだった。昼休み、僕のいない間に明日香が友達と何か話していたのが気になっていたが。そして夕方になり、お互い部活が終わって一緒に帰路につき、駅に着いた際、
「そういやトシ。今日、何の日かわかっているでしょ?」
と俺に言ってきた。そして明日香から、何かが入っている袋を手渡された。袋の中身はチョコレートだった。
「これって・・・手作り?」
俺は明日香にそう言う。そして明日香は、
「うん。だって私、トシのことが・・・」
と俺に言う。最後のはどういうことだ?しかし、
「だって私、トシのことが・・・トシのことが大好きなんだもん。大好き。世界一大好き。私、トシのこと愛してるの。よかったら付き合ってください!」
と明日香は俺に話を続けてきた。つまりこれは・・・えーっと、とりあえず話を整理してみる。
・・・つまり、俺は明日香に告白された。要は明日香が1人の男性として俺のことが好きだっていうことだ。明日香の言葉は真剣だった。幼稚園以来の付き合いである幼なじみがここまで真顔で俺に言うのは初めてかもしれない。そして、明日香の顔は初めて見るくらい紅潮していた。そして、僕の顔も紅潮し始め、心拍数が凄いことになり始めた。
『美人で、スタイル良くて、運動神経抜群で、そして活発な幼なじみ』
それが俺のイメージする明日香だった。そして俺はこう考えているうちに、明日香にこう返事をした。結論は最初から決めていた。明日香には悪いけど・・・
「・・・ごめん。今は明日香とは付き合えない。俺、明日香から好きと言われて嬉しかった。でも・・・」
「そう。私こそごめんね。こんな幼なじみで・・・」
「でも俺は明日香が大切な人だと思ってる。沙弥香よりもずっと、大切な存在。俺と明日香に築かれた信頼は簡単に壊れない」
「トシ・・・」
「そんな訳で明日香、これからもよろしく」
「うん。私もトシは大切な存在だよ・・・」
明日香は俺にそう告げて別れた。そして、明日香の目は赤く充血し、潤んでいた。
◇ ◇ ◇
そして、
「お兄ちゃん、ハッピーバレンタイン!!!」
と帰宅した早々、さーやんに言われ、何かが入っている袋を手渡された。袋の中身は・・・またチョコレートだ。
「これって・・・手作り?」
俺はさーやんにそう言う。そしてさーやんは、
「うん。私、お兄ちゃんのために初めてチョコを一から作ったんだから!」
と俺に言う。そして、
「沙弥香、ありがとう。お兄ちゃん、今までで一番嬉しいよ・・・」
俺は妹にこう言ったのは言うまでもない。そして、
「うん、私もお兄ちゃんにチョコを渡せてとても嬉しいよ。だって、私の大切なお兄ちゃんだから・・・ね!」
と妹は最高の笑顔で俺に言葉を返した。
・・・で、この後さーやんから、「何でお兄ちゃん、明日香さんのことフッちゃったの?もったいない・・・」と言われることを知らずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます