第5話

売店で飲み物と軽食を買うため列に並んでいた時、後ろから肩を叩かれた。俺はすぐ後ろを振り向く。後ろを振り向くと、ルックスの整った女性がいた。綺麗な長い黒髪となぜか似合う水着姿が特徴的だった。どうやら俺はその女性に肩を叩かれたらしい。歳は俺より年上、25歳くらいだと思う。しかしこの女性、どこかで見覚えがあるような・・・




「そこの君、私と遊ばない?」




その女性は俺にそう言ってきた。




「あの・・・俺になんの用ですか?逆ナンならお断りします」




俺はその女性にそう言う。するとその女性は、




「逆ナンじゃないって。1人でプールだから遊び相手を誘おうと思って・・・」




と言ってきた。そして俺は、




「同伴者いるんでダメです!」




と言った。そして買い物を終えると俺はさーやんがいるプールサイドのテーブルに向かうが、その女性は俺の後をつけてくる。




「もしかしてストーカーですか?警察呼びますよ!」




俺は一歩止まり、その女性に言った。すると、




「あなた、石見俊彦いわみとしひこくんだっけ?声優の田所沙弥香たどころさやかちゃんは知ってるよね?」




とその女性は言ってきた。




「知ってるも何も沙弥香は俺の義妹です。っていうかなんで俺の名前を知ってるんですか?」




俺はそう言う。するとその女性は、




「実は私、沙弥香ちゃんとはちょっとした知り合いなの。最近、沙弥香ちゃんの母親が再婚したのも知ってるわ。石見くん、もしかして私のこと知らないの?」




その女性の一言で僕は彼女が一体誰なのかわかった。最初からどこかで見覚えのある顔だと思ったが、その女性と会話のやりとりをしていたせいで気がつくのが遅くなった。




「・・・あなた、声優の伊藤優いとうゆうさんですよね?」




僕はその女性にこう言った。160cm台半ばの比較的高い身長と長くて綺麗な黒髪。そして一流女優顔負けの顔立ちと特徴のある声。それは伊藤優そのものであった。




「いかにも、私が伊藤優よ。さすがTwitter王にして、人気ユーチューバーの石見・・・いや『亜人先輩』くんね」




伊藤優。ここ最近は毎クール5本以上アニメに出演し、それもほとんどが主役クラスという売れっ子声優だ。去年ソロデビューをし、今年に入ると写真集も出した。さーやんから見れば、同じ事務所の先輩で、アニメでも何度か共演している。さーやんはTwitterをやっていないので、最近俺がTwitterで一番RTリツイートやリプライを送っている声優さんだ。まぁ端的に言えばさーやんの次に好きな声優さんである。とはいえ、さーやんとは雲泥の差だが。




余談だが、俺は小6の春から『亜人先輩』という名前でTwitterをやっている。当初は父親のパソコンでやっていたが、中学校に入った時に、スマホを買って以来本格的にTwitterへのめり込んだ。5年以上Twitterをやって、ツイート数は20万を超え、フォロワー数は10万人を超えている。そして2年ほど前から、YouTubeへの投稿を始めた。内容は漫画やアニメの感想が中心なのだが、動画の再生回数はかなりの数である。




結局俺はその優さんを連れてプールサイドのテーブルに戻った。アリ姉と明日香ももう戻っていた。




「お兄ちゃん、遅いよ!私達これから昼ご飯にしようと思っているのに~しかも勝手に昼ご飯買ってるし!って、あなたは・・・」




さーやんは僕にこう言った途端、優さんの顔を見て一瞬声を止めた。




「沙弥香~やっぱ今日も可愛いよ!妹にしたいくらい」




優さんはさーやんにこう言い、さーやんに抱きついた。




「石見くんも羨ましいよ!あの沙弥香ちゃんが妹だなんて・・・」




優さんは僕にこう言う。そして、




「優さん、やめてくださいよ~」




優さんに抱きつかれて困惑するさーやん。そして僕達3人のやりとりについていけないアリ姉と明日香。結局、2人は昼食を買うため売店に向かった。俺もさっき買ったのだけでは足りないので焼きそばを頼んだ。2人が売店に向かっている途中、優さんは余った椅子に座り、さっき売店で買った昼食を取る。そして僕もさっき買った軽食を食べる。




「沙弥香と優さんって、いったいどういう関係なんですか?」




俺は食事中の優さんにこう言った。すると優さんは、




「姉妹の契りを交わした仲よ」




と言った。僕は優さんの発言に一瞬「!?」と思った。しかしさーやんが、「お兄ちゃんも真に受けないで!」と言ってくれたおかげで我に返った。そしてさーやんは、


「優さんも兄に誤解を与えるようなことを言わないでください!これ以上優さんのイメージが崩れると困ります。私もあなたのことを尊敬しているんですから!」




と言った。そして優さんは、




「俊彦くん、私は少し歳の離れたお姉さんだけどあなたと友達になりたいの。よろしくね」




と俺に言い、LINEを交換した。そして優さんはプライベート用のTwitterアカウントから俺のTwitterをフォローし、俺もフォローし返した。そして、しばらくすると優さんは昼食を食べ終え、昼食を買い終えた2人も戻ってきた。そして俺たちが昼食を取る時、すでに昼食を食べ終えた優さんは暇そうにスマホを眺めていた。




そして昼食後、アリ姉と明日香は、「優さんってトシと沙弥香ちゃんの知り合いだっけ?だったら3人で仲良くしてね」と言いプールへ向かった。そしてほどなくして、俺・さーやん・優さんもプールへ向かった。

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