羨望

パーチェにつれられて初めて孤児院に行った。


孤児院。


父親が好きではない場所。行くべきではない、場所。

だが、この単細胞生物パーチェが強引に連れてきたのだ。俺は嫌だったのに。

パーチェが手を離さないから。だから、俺は仕方がなく。


嫌々来た俺にも子供たちは無邪気にまとわりついてきて。この子達は愛されているのだと分かった。親なんかいなくてもパーチェたちの愛に包まれて。

きっと今世界はこの子達に優しい。

でもきっと、遠からぬ未来気づくのだろう。世界は優しくなんてない、と。




優しい世界なんて、まやかしなのだ。

淡くてすぐ消えてしまう泡のような。



でも。だからこそ願う。

どうか、少しでもこの時間が続くように。

貶してもいくら貶しても本当にしつこく貶しても何一つ堪えることの無いパーチェがいるならきっと大丈夫だろうけど。




それを受け取れない俺の代わりに。

どうか、少しでも長い幸せを。

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