嘘のハイライト

嘘というものは八割の真実の中にほんの二割程度混ぜるとうまくいくものである。

それでいくと私は嘘を付くのが得意な部類に入る。

というよりは、嘘を突き通す度胸がないからこそ、

まるっきりの作り話というものを使えないのだとも思うのだが。

さて、先日ある女性と食事をしていたとき、

1つ目の灰皿が交換されたほどの頃合いに、

実はですね、と少しもったいぶった前置きをして、彼女が話しだした。

職場の人と遊ぶって、彼には嘘をついて出てきたんです。

でも、嘘でもないじゃないですか。

なるほど、確かに彼女との出会いは私がバーのカウンター越しに声をかけたことがきっかけであるし、

私のことを職場の人と言えないことはないだろう。

可笑しそうに話す彼女であったが、

どこか少しバツが悪そうにしているところが私に似ているように思えた。

つい私も、罪悪感から逃れるためか、相手のそれを和らげるためかはわからないが、

僕も同じ嘘をついてきたんですよ。

と、答えた。

職場のメンバーで飲んでいたときに声をかけたのだから、

職場の人と遊ぶと僕が恋人に伝えたとしても、

嘘ではないはずだ。

全く褒められたものではない共通点にひとしきり笑った彼女が、

タバコに火をつけたとき、

少し安心した顔に見えたのは確かである。

ハイライトを咥える彼女の横顔がライターによって照らされ、まるでハイライトじゃないかとおかしく思えた。

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ノンフィクション50:フィクション50の女性の話 寿司 @zumis

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