第46話 現実の問題
※※※※※※※※※※
【国営放送実況席】
「夏の全国高校野球全国大会。第2回戦、第1試合。弘前高校 対 入善東高校。開始時間が近づいてきました。当試合の解説は、社会人野球では樋田自動車の監督を務めていた、広瀬寛治さんでお送りします。広瀬さん、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「さて、1塁側の入善東は夏の甲子園大会出場5回を数える実力校ですが、3塁側の弘前高校は初出場ながらも、第1試合で最多得点・最多本塁打数などの大会記録を塗り替えた、強力打線を擁するチームです。打線の強力さに対して守備力がそれほど高くないとの評価を受けていますが、今回の試合も、し烈な打撃戦となるでしょうか?」
「うーん。こればかりは、始まってみないと何とも。今回は特に、山崎選手が先発投手ですからねぇ。さすがに第1試合終盤のような全力投球でスタートはしないと思いますが、ポジションチェンジで回していくにしても、入善東の得点力は少し抑えられると思います」
「今日の試合は入善東高校が先攻、弘前高校が後攻です。守備練習もそろそろ終わり、残すは投球練習のみです。山崎選手は全国的にも珍しい、オーバーとアンダーの両方を投げ分ける投手でもありますが、今日はどちらをメインに来るでしょうか」
「アンダースローは全身を使って投球するスタイルのためか、肘への負担が少ないと聞きますし、アンダーをメインで肘への負担を軽減しつつ、体力温存の方針で来るのではないでしょうか?普通はアンダーをまともに投げられるように訓練すると、アンダーのみの投球が身についてしまって、アンダースロー以外はできなくなるものですが、その点だけを取って見ても、山崎選手は器用な選手ですねぇ。よほど身体の使い方を心得ているというか」
「今のところ、サイドとスリークォーターの投球で練習しています」
「ボールのリリースタイミングを見せないようにしていますね」
「――投球練習、終了です。試合開始のサイレンが鳴りました!第2回戦、第1試合、いよいよ開始です!」
※※※※※※※※※※
キィン!
アンダースローからの遅いシュートを打たれた。
打球は3塁線へ。速度そこそこのゴロ。3塁の松野(先輩)が危なげなくキャッチすると、ファーストの俺へと送球。足を伸ばした状態でボールをキャッチした俺は、ランナーが近づく気配を確認してから、タイミングを見計らって身体を起こす。
そう。今日は山崎が先発投手であり、いつもはセカンドの俺がファーストである。守備のシフトとしては、いつもの配置に対してショートとピッチャー、セカンドとファーストが交代している配置だ。ともに近い守備位置であり、ベースカバー等の練習もしている配置のため、守備感覚としては問題ない。そのための守備練習のおさらいも、最近の練習でやっているため、特に問題はない。
ただ、今回の試合、いつもとは違う。
特に俺へのオーダーが過酷だと思わなくもない。というか難しい。
さっきもドキドキだった。ていうか、ヒュンてなった。
キィン!!
今度の打球はピッチャーマウンド前ではずみ、バウンドしたボールを山崎がピョンと飛んでキャッチ。ランナー位置と俺の姿勢を確認してから、ゆっくりと送球する山崎。
おそいおそい遅い。はやく投げてよ。
ボールは絶妙なタイミングでランナー到着ちょい前で届く。塁審が確認できたかな、と思うタイミングとランナーの気配を確認して、伸ばした身体を起こす。
いやー、もうギリギリじゃん。もう少し余裕を持ってくれないかな。またヒュンてなったし。こんなのずっと続けるの?
山崎は「あとひとつー」と声をかけてから、順調に投球を続ける。
キィン!
今度の打球は少し速い打球でショート前。岡田(先輩)が無理なく反応してキャッチ。俺の姿勢と、ランナー位置を確認して、狙い定めて送球。
ボールをキャッチして、塁審のアウト!のコールを聞き、ランナーの気配を確認してから身体を起こす。スリーアウトチェンジ。ボールを山崎に返して、3塁ベンチへ戻る。
「さぁーて、色男。どうだった?」
ベンチに戻ると、山崎が少し抑え気味の声で聞いてくる。
「…モッテモテだよ。超モテ期到来だよ。すでにギリギリだよ」
「「「…マジで?」」」
監督を含めて、弘前野球部全員が、俺の言葉に声を返す。
「間違いなく?」
「間違いない。あの連中…三回とも踏もうとしやがった」
「「「………マジか……」」」
絶句して、守備練習を開始する入善東の選手を見る仲間達。
マジだよ。おおマジだよ。足を踏まれる前に引っ込める時に、毎回ヒュンってなったよ。不自然でない程度にランナーが近づくまで送球を遅らせるとか、ランナーが近づくまで足を引っ込めるなとか、ファーストの俺に対するオーダーが厳しすぎる。間違って足を踏まれるのは御免だから、最悪の場合はファーストを放棄してもいいという言質は取ってあるけど、確認と証拠映像集めのためとはいえ、ギリギリだよ。
―――今日の試合を前に、山崎から俺へのオーダーはこうだった。
『悟。アンタの任務は、連中が【負傷狙いをしてくるかの確認】と、【その行為の証拠映像】を記録する機会を得るための【釣りエサ】になるという事よ』
『それで俺がファーストなわけ?』
『足を踏ませるチャンスを作れば、やる気がある奴なら食い付く可能性あるでしょ?』
『やだぁー』
『だいじょうぶ。……アンタなら、できる。あたし信じてるから』
『やだぁー』
『信じてるからね!!』
『やだぁー!』
『4番ホームランバッターなんて恰好のエサでしょーが!つべこべ言うな!!クロスプレーなんか言い逃れはいくらでもできるけど、足を踏もうとするのは分かりやすいんだから!空振りさせて転倒させてやるぜ!くらいの気概を持ちなさいよ!!アンタならできる!!君ならできる!いや君にしかできない!君の働きが皆を助けるんだ!!』
『おまえ絶対にブラック企業の社長向きだよ』
―――以上である。
もちろん、覚醒状態でランナーを視界の隅にギリギリ入れておけば、危険な距離は正確に分かる。竹中がそのままファーストを守備するよりも負傷させられる危険性は少なくなり、釣りエサとしても、効果は抜群だろう。
でも危険物が近づいてくるのをギリギリでかわせ!とか、すんごく嫌なんですけど。もうホント、さっき3回ともヒュンてなったし。
「監督。あちらの監督はどうでした?」
「うーん…指示は出していたと思うが。会話の内容までは聞こえないからなあ」
ふーむ。と考え込む山崎。
「監督は続けて、入善東の監督のサインや動向を注視していてください。あと、攻撃に関しては合法ギリギリの走路妨害をしてくる可能性があります。状況は記録して、試合後にでも抗議できるように準備を」
「了解している。メモは手放さんよ」
山崎は皆を振り返る。
「塁周辺を回る時はもちろんだけど、クロスプレーの可能性がある時は充分に注意してね。証拠映像を盾に叩くのは、あくまでもついで。選手の安全が第一だからね。ケガさせられないように注意するのを忘れないで。基本、近くの選手の位置取りには注意よ」
「「「…おおー」」」
入善東の守備練習が進む。1番バッターである山崎は、ヘルメットと防具を装着する。
「ああ、あとそれから」
山崎はネクストサークルに向かう直前に、振り返って言った。
「――デッドボールには、充分に注意してね」
「「「……おおお」」」
山崎の言葉に、元気のない返事を返す俺たち。
入善東には、速球派投手が4人いる。仮に、注意・警告・退場、もしくは警告・退場となった場合でも、うまくすれば2人は負傷退場にできる、という計算が成り立つ可能性がある、という事だろうか。さすがにそれはアレすぎると思うのだが。
しかし監督の指示があった可能性が高いとはいえ、躊躇なく1塁手の足を踏んでくるような連中だ。絶対に無いとは限らない。
デッドボールは、本当に危険である。硬球は硬い。
かつて防具が発達していない時代、ベースボールにヘルメットが導入されていない時代には、剛速球投手の頭部へのデッドボール事故で、死者も出ている。マウンドの距離を現在の距離にしたという剛速球投手も、打者をデッドボールで3日間も昏睡させた事がある。
ヘルメットが導入されてからも、頭部へのデッドボールでの負傷退場事故は何度もある。そういった事例、そして昨今の選手への負傷に対する安全意識向上の流れもあり、頭部へのデッドボールがあった場合、当たり方によっては『選手が何ともない』と言っても、危険回避のために周囲の判断で一時退場もありうるのだ。
ゆえに、故意死球は一発退場の対象ともなりうる。もっとも、証明はほぼ不可能だが。
現在の防具は優秀だ。ヘルメットも、プロテクターも。150キロ台のボールを食らったとしても、ど真ん中に直撃でも食らわない限り、頭部へのデッドボールでもそうそう死ぬような事はない。
逆に言えば、故意死球を投げる側にとっては罪悪感を減らす材料でもある。死ぬような怪我はしない。一時的に退場させるだけ。そう考えれば、そう教育されれば、『安心して』故意死球を投げてくる可能性はあるか。
命に関わる部位は頭部や首元だが、それ以外では命に関わる怪我にはならない。手や前側の足に食らう打者はほぼいないが(避けやすいからだ)胴体、背中、軸足は避けにくい。腰や軸足に速球を食らえば痛みでプレー続行はほぼ不可能になる。
弘前高校は12人しかいない。
仮に投手1人との退場と引き換えにバッターボックスで2人、クロスプレー関係で2人が負傷退場になった場合、イニング交代の時点で9人が揃わなかったら、弘前の負けはほぼ確定である。負傷治療時間をどこまで認めてもらえるかどうかが肝になるが、これは相手チームの抗議があれば無意味になるものだ。
「…俺たちがプレーしているのは、野球だったはずだが」
何かこう、どこかの漫画に出てくるような、ラグビーとアメフトとベースボールを足して2で割ったような宇宙スポーツでもやっているような気分になってきた。
…まさか、山崎は狙ってこないよな?
1番バッターだし。女子だし。というか、狙っても無駄なんだけど。あいつに当てられるわけがないし。むしろ故意死球なんぞ投げられたら、その後どうなるか分かったもんじゃない。最悪、俺がダッシュして山崎にタックルして、乱闘を回避する必要がある。
…その場合は俺の身が危険になるのだが。
乱闘モードになった山崎なんぞ暴走機関車のような危険物でしかない。呪いのホッケーマスクに憑りつかれた殺人鬼のような何かだ。できれば近づきたくない。
しまった。隣の甲子園神社に参拝しておけば良かったかもしれない。こんなおかしな試合、神頼みも必要だったかと、そう思ってしまう。この試合が無事に終わったら、お参りしてから帰ろう。そう思った。
入善東のピッチャー、第1投。
『――ボール・ワン』
球審のコール。
とはいっても、どう見てもボール。バックネットに飛んでいく大暴投だった。
「なんかもう、全部あやしく見える」
「デッドボールの前振りですかね」
「いやいや、フォアボールの前振りじゃないの」
「普通にワイルドピッチの可能性もあるけど…」
「「「もう何も信じられない」」」
山崎はそのままフォアボールで1塁へ。全部外角のさらに外へ逃げる変化球とか、キャッチャーが捕れない暴投とかだった。…もっとも、県大会で見せた【秘打・野球盤打法】を使えば当てられるボールも1球はあったが。山崎は普通に振らずに塁に出た。
当然ながら、今度はランナーに対するクロスプレーの危険性が出る。ただし対象は弘前野球部員の中でも最も安全性の高い山崎だ。むしろ手口を見せてくれた方が助かる。山崎の目論見もそこにあるのかも、しれない。
「…さて、どういう展開になるのやら。安全第一で、なんとか」
4番の打順が回ってくるのはほぼ確定。俺も防具の準備をする事にした。
※※※※※※※※※※
【国営放送実況席】
「山崎選手、2盗に続いて3塁へも盗塁敢行!…おおっと。キャッチャー送球ミスか?!あわや山崎選手に直撃しそうになりましたが。山崎選手の足が速い!3塁後方に滑るようにしてスライディング!すぐさま起き上がってベース上に立ちました」
「今のは危なかったですねぇ。送球が逸れた分、タッチは難しくなったみたいですが。倒れこむ3塁手とランナーがうまく交差しなかったら、ランナーに激突してましたよ」
「これでノーアウト3塁。投球カウントはボール2、ノーストライク。弘前高校、先取点のチャンス到来です」
「ここはスクイズで堅く1点、といきたいとこですかねぇ」
「弘前高2番打者の1年竹中くん。バントの構えです…おっとバントの構えからヒッティング!ボールはショート前へ!3塁の山崎選手、飛びだしている!お構いなしに本塁へ走っている!戻る気配なし!ボールは本塁へ送球!あっと送球逸れた――!!」
※※※※※※※※※※
――やりやがった!!
山崎が。そして入善東が!!
山崎の本塁への走塁は打球からすれば、ほぼ暴走だ。
そしてショートからの送球はホームに向けて飛んでいない。3塁線側に逸れている。さらに、そのボールを追ったキャッチャーは飛びこもうとしている山崎の前に飛び出した。
近年になって導入されたルールに、コリジョンルールというものがある。
3塁走者とキャッチャーのクロスプレーによって負傷者が続出する状況を鑑みて、負傷者を減らすためのルールとして米国で発案され、導入されたものだ。このルールによって、キャッチャーは『ブロック行為』を禁止されている。ボールを持っていない状態での、3塁走者の走塁線上へ立つ事を禁止されているのだ。
フォースアウトでない限り、ランナーはタッチされないとアウトにならない。そしてボールを持っていないとタッチできない。ボールを持たない状態で走塁を妨害してはならない、というのがルールの基本的な部分だ。
しかしボールをキャッチするために無意識にランナーの前に飛び出す事は、明確に禁じられていない。少なくとも現在はそういう事になっている。前もって禁止エリアに立っているのでなければ、キャッチした瞬間に立っていただけならば、それは合法とも言える。
たった今行われた送球が意図的なものであれば、それは非合法スレスレの行為だ。そしてこいつは『送球をミスった』かどうかなど、投げた本人にしか分からない。
審判の判断によっては走塁妨害が適用され、タッチが無効となって得点になる可能性がある。しかし、アウトではなく負傷退場を狙っているのだとすれば、それは関係ない。
走者に致命的な一撃を加える事に成功すれば、それで事足りるのだ。
問題は走者が山崎なことだ。
【想定1】山崎が殺人タックルをかます→山崎の勝ち。ただし警告を受ける可能性あり。
【想定2】山崎が反則的なブロックの一撃を耐える→証拠映像が手に入る。しかし負傷の可能性もありうる。
【想定3】山崎、この期に及んで3塁へ戻る。足で逃げ回ってセーフになる。
想定3がもっとも平和的な気がするが、これはどうなるのか。
――山崎、速度を落とさずに真正面からホームに向かう。キャッチャーの位置はホームよりもだいぶ3塁寄りで、飛んできたボールをキャッチ。抗議するには充分な条件が揃っている。が、それでも山崎は止まらない。これはまさかの想定1なのか。
次の瞬間。キャッチャーが山崎に向かって倒れこむように(飛びかかるようにと言うべきか)ミットを振りおろすのと同時に、山崎の体が宙で前転した。走りの勢いをまったく殺さずに山崎の体が小さく丸まり、半回転する。
――あびせ蹴りか?!
と、瞬間、心配したが。
半回転した山崎の体が細く伸ばされ、飛びかかったキャッチャーの体と交差する。おそらくキャッチャーとしても、減速して左右に避けようとしたり、体当たりする事は想定していたのだろう。だが、まったく減速せずに股の下を滑り抜ける事は想定外だったようだ。
地面にダイブするキャッチャーを置いて、タッチされる事なく滑り抜けた山崎はホーム手前で止まり、体を起こしてから、よいしょ、とホームを踏んだ。
『セーフ!!』
球審のコール。
弘前応援団の歓声が、甲子園の空気を震わせた。弘前高校、合法的に先取点だ。
山崎がスライディングした部分を泥だらけにして、ベンチに戻ってくる。上半身も背中も泥だらけ。1回裏の攻撃だけで、もう真っ黒だ。
「水まいたばっかりの内野、泥汚れが半端ない。気持ち重いわー」
「まだ1回だからなぁ」
水気を残した内野の泥、ほんと真っ黒だよな。山崎の背中をパンパンと叩いて泥を落とす努力をしてみるが、あんまり落ちる気配がない。乾かないと無理かも。
「しっかし。やりたい放題よねぇ。すでに抗議ネタが5件くらいあるんだけど?まぁ3塁守備に関してはグレーだから4件かな?」
「ランナーと、ボール全般に注意しないとダメって事か。気疲れ感が半端ないわ」
まったくもって嫌な話だ。このプレーを教育した人間は性根が腐っている。とにかく、クロスプレーの可能性がある部分すべてに注意しないとダメで。できれば避けた方がいい。こちらとしてはスライディング全般が危険という訳だ。ラフプレーの危険性に委縮するだけでも不利なのにな。最悪だぜ。
「ともかく、だいたいのタネは割れたし。注意していきましょうか。…入善東のクソ監督め。試合が終わったら抗議はもとより、ネット民を煽りまくって炎上工作で引責辞任に追い込んでやるわ…」
「火元がバレないようにやってくれ」
さすがに俺もいい加減、頭にきつつある。エサ係は継続中だし。
まだ1回だというのにこの有様。デッドボール以外でも、ランナーとして負傷退場対象として狙われる事が確定したも同然となれば、本当にウンザリする。
しかし、タネが分かれば避けようもある。さすがに大昔の漫画みたいに空中ドロップキックまがいのスライディング(あれはスライディングとは言わない)なんてものは無いだろうし、基本はランナーとボールに気をつければいいという事だ。
注意して、負傷者を出さずに勝利する。その意味での、完全勝利を目指すぜ。
※※※※※※※※※※
―――以後、ときどき発生する、俺の足を踏み損なう件の他は、特に何もなく試合は進んだ。暴投を装った(と思われる)山崎と俺の敬遠(というか四球)により、俺と山崎は打撃のチャンスが無かった事以外は。
山崎は前にランナーがある時に、例の秘打を繰り出したが大ファールになっただけで、あとはボールを完全に外されて打撃のチャンスは無かった。
結果、確実にランナーの出る1番4番と、他の打撃陣による、危険のある走塁を避けた打点勝負と、山崎のペース配分を考えた投球による投手戦の様相を見せた。
見た目はごく普通の試合。普通の試合でも、入善東は特に弱いわけでもない。特に守備に関しては弘前の上を行く。打ってもなかなか点に繋がらない。
こちらも山崎が好投を見せるも、内野守備に関しては守備能力が低下している。結果、いつぞやの雲雀ヶ丘戦のような、小刻みに動く試合展開となっていた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
【スコアボード状況】
入善 000101 |2
弘前 20010 |3
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
現状、6回表で1点リード。このまま行けば勝てる。山崎の投球に問題はない。
ランナーが居ない時、1人で1塁までの時は基本的に打たせて捕るピッチングをしてきたおかげで、投球数は節約できている。あとはほぼ全力で投げても投げ切れるだろう。抗議ネタはもうかなりの数に上がっているし、1塁の踏み損ないは4回以降は減ってきたが、まだ時々はあるし。証拠映像的なものも検証可能レベルになっているはずだ。
試合が終わったら叩いてやるぞこんちくしょう。勝って抗議だぜ。
そう、思っていた、そんな時。
気を抜いていたわけではなかった、はず。
だが、そこで事件は起きた。
偶然か。それとも故意か。
それは不明だ。
最初から狙ったのか。それとも、チャンスと見て反射的にやったのか。
こちらの用心が足りなかったのか。
しかし。現実は非情だ。事実のみがある。
弘前高校選手、負傷者1名。診断の結果、打撲と捻挫により走る事は不能と判断された。選手としての起用は不可能。選手の数は残り11名。
その結果に、山崎からは黒いオーラが漏れ出し、山田キャプテンがギリギリと歯を鳴らしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます