第9話 血塗れの僕を殺せない後輩の話

どうしてこうなったのかなんて、やっぱり僕の愚かさがもたらした結末でしかないのかもしれない。

「いいんですよ……先輩……」

彼女が僕の頭を撫ぜる。

腹部には僕の握るナイフが深々と刺さっていて。じわりと滲み染まる赤に、頭の何処かで、思ってたより人の血は吹き出やしないんだななんて考えてる自分が居て、何処にも傷のない僕はどうしてか涙が止まらなかった。

「私は、先輩を殺したりしません」

酷く優しい声。消え入るように何度も、何度もその言葉を彼女は繰り返し重ねた。

「ね、明日はきっと晴れます。虹が架かりますね。」

啜り泣きながら「そうだね。」と返した。

流れ行く毒々しい赤に、七色の橋と透き通る青の空想はあまりにも不釣合いで、

だけども君の瞳には、きっと綺麗なものが相応しいから。僕を映して欲しくはないから。

震える右手を、更に強く握りしめて押し込めば、君は満足気に笑う。

華こそは散るが最も気高いと。

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