第3話 出原さんに首ったけ

クラスメイトの出原さんはズレた子だ。

具体的には顔が中央線よりも5cmは右にある。

異形人類の社会的認知から暫く経っていて、もう獣人族やマーマンなんて珍しくもないし、この学校の半分は妖怪だ。だけれど僕にはどうしてもズレた彼女のことが気になる。

本当に無性に気にして仕方がなかった。

「ね、出原さんってなんの妖怪なの?」

「デュラハンなんだぁ」

さくりと齧られ飲み込まれたクッキー。

それってどこで消化されるの胃に入ったの。

「それってさ、首がないか取れてるんじゃあないっけ…?」

「へへー私もねー!8歳までは別々だったんだぁ」

もぐぱくひょいと消えてくクッキーの山。

本当に消化されてるのだろうか。

「パパが頭をくっつけてくれてぇ、それから一般人に紛れこめてるのです。」

そう言って

えっへんどやぁと豊かな胸を張るけれど、

やっぱり5cm、右にズレたままだ。

何とも言えない表情を隠しきれない僕に向かって、こてんと首を傾げる彼女の顔はようやく身体の真ん中だった。

「でも不思議、付喪神さんはたまに見るけどギロチンさんも居たんだねぇ」

無垢に煌めく彼女の笑顔はやっぱりどこかズレたまま。

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