苺は無事、保護された
「ったく……そんなアニメ探偵みたいに上手く進むかってんだ」
服を着直したタイチは、乱れた髪の毛を手て撫で付けた。
「そもそもさ、何で僕らの中に犯人がいるんだよ。女子は一階で風呂に入ってたんだろ? 男子だってさっきまで家に帰ってて、今アイの家に戻ったばかりなんだぜ? その間にひとりで行動できたヤツなんて……」
タイチはふと考え込み、ちらりと私の方を見たが、すぐに首を横に振って言い直した。
「ひとりで行動してたやつなんて、誰もいない。という事は、だ。犯人は無関係な外部の人間じゃないか?」
タイチの珍しくまともな意見に、マリアも含めて皆が「確かに」という顔をした。
「ぼ、僕知ってるよ。いま近所に泥棒が出てるんだって。何件も被害にあって、犯人まだ捕まってないって」
「ナイスだ、トシカズ! そういやぁ、僕も学校で同じ張り紙を掲示板で見た。今回のもそれに違いない! 確かそいつは……下着ドロだ! だから女の子の……か弱いアイの家に入ったんだな! 卑劣な奴め!!」
タイチは本気で怒っているようで、ぐっと拳を握リ締めていた。
アイは級友の正義感あふれる様子を見て、びっくりした。そしてすぐにハッとして頬を赤らめる。アイは嬉しそうに目をキラキラさせ、乙女の表情でタイチを見つめた。
(もしかして、私の事を心配してくれてる? ちょっと……嘘みたい……マリアには悪いけど……超嬉しいかも!!)
だがアイに芽生えた淡い色の感情は、一瞬で消える事になる。次のタイチの行動で、一瞬でドドメ色に汚されてしまったからだ。
「っつー事はだよ! 僕たちの宝物以上に、アイの大事な物が狙われたって事じゃないか! やばい、手遅れかも!!」
「へ?」
固まるアイをよそに、タイチの次の行動は素早かった。ずかずかと部屋を反対側まで歩いていくと、部屋に備え付けのクローゼットの扉を勢いよく開けた。
そこに積んである、ミッヒー柄のピンクの衣装ケースを開くと、中に手を突っ込んだ。
「よ、良かったあ……ある……あるぞ! まだ無事だ。ほら喜べ、アイ。お前の下着は無事だったぞおお!!」
「い、一瞬でも期待したワタシが馬鹿だった!!! 死んでしまえ!!!!!」
アイの重力を無視した水平飛び蹴りが、タイチの後頭部にもろに打ち込まれた。
「な、なんで……無事……なのに……」
イチゴ柄のショーツを握ったまま、崩れ落ちるタイチ。恥ずかしそうな顔のマリアがズカズカと歩いてきて、タイチの手からアイの下着を奪い取った。
入れ替わりでアイが、まだ倒れているタイチの背中に両足で飛び乗った。ブシュっと、タイチの肺の空気が押し出される音がした。
「なんで私の下着の場所、知ってんだ! この変態!! ほんっと、あんたに告ろうとしとアタシがアホらしいわ!」
まだまだ懲らしめ足りず、爪先で悪ガキをガシガシ踏みつけるアイ。タイチは助けを求めたが、さすがのマリアも止めようとはしなかった。
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