「でもさ、無くなった物を考えてみると、不思議だよね。メガネケースに、ブローチ、スプーンとトレーディングゲームのカードでしょ？」

　タイチの頭を追加で一発ポコッと殴ってから、アイが首を縦に振った。

「うんうん。トシカズの言う事、スゴクわかりみ。持っていった人の気持ち、良くわからないよねえ」

「私もアイと同じ思い。高価な物ないよね」

「イチヤのカード、お金使ってるかもしれないけど、元は２００円でしょ？　この中で一番、高いのはマリアのブローチかな？」

「……あ、でもそんな高いものじゃ……ない……と、思う……けど……」

　マリアが変に言いよどむ。

「……あれは三千円……で……お釣りが……くる……」

　アイに押しつぶされていたタイチが、苦しげにつぶやいた。

「タイチ！」

　マリアが超反応で遮（さえぎ）ろうとする。

「へえ、すごく可愛いのに、値段それぐらいなんだ……え？　何でタイチが知ってんの？　あ……まさか……マリア！　あのカメオ、お母さんから貰ったって言ってたのに……」

「……ごめんなさい」

　マリアはそれ以上答えられず、顔を真っ赤にしてうつ向いてしまった。

「嘘だったのね！　もぉ！　これじゃワタシますます馬鹿じゃない！　いつの間に二人がそんなトコまで……く、くやし過ぎる！」

　嫉妬と恥ずかしさで半泣きになったアイが、タイチの首をギュッと締め付けた。

「く、くるしい……」

「あーもう！　アイも止めなよ。ますます犯人のことが分からなくなってきたよ！」

　トシカズが諦めたように大きな声で嘆いた。

　五人のやり取りを聞いていたのだが、私は呆れ果てていた。正直、叫びたくなるのはこっちだ。こんな簡単な犯人探しにどこまで手間取るのだろう。さらに、どうして彼らはその『忘れ物』に気づかないのだろう。

　仕方ない。ここは大人になることにした。私はすっかり意気消沈しているイチヤに向かって、落ちていたそれ（・・）を、見えるようにすっと動かしてやった。

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