第8話 友達
「ユウキ! 上位ギルドに移籍だなんて、この裏切り者!」
プーさんからのメッセージを発見。
ユウキは僕の登録名、よくある名前だから、リアバレなんて心配いらない。
「ごめんなさい」
と一言だけ返事を送信した。
プーさんと所属していたギルドは出入り自由のまったり系ギルド。
「追っかけるからギルマスに一言入れとけよ」
返信はやっ! 夜はいつも居るよな……この人……。
「やってみる」
十時からギルマスがパーティに合流するから何とかなるだろうと思い返事した。
それにしても、このおっさん、付いて来る気か……、「ランキングは興味ない」って言ってたけど大丈夫かな……。
まあ、キャラメイクはこだわっていた様子だし、その上、課金者だから案外、僕なんかよりギルドに馴染むかもしれない。
それに、おっさんとまた一緒のギルドになれるとしたら、僕も嬉しい。
連休明けに家族の話を聞いてくれたおっさんは、慰めてくれると共に僕と一緒に遊んでくれた。
顔が見えない、お互いのリアを知らない相手、だからこそ生まれる絆というものもある。
またまたメッセージ、それに従いステージを選択してパーティを編成、
「さあ、始めるわよ。ついてらっしゃいっ!」
相変わらずエロいエルフだ。おっぱいがでかい!
テクテクと彼女に付いて歩く。
今回はプレイヤーキャラ育成が目的なので従者は連れていない。経験値を無駄に従者に持っていかれるからだ。
「従者育成の方が好きなんだけど」
「おバカ、自分を鍛えないと、強くなれないわよ! レベル五十以上、ステージ三のマップ攻略、これを目標になさいっっ!」
えーー! いいよ、別に……低レアでもカンストさせると可愛い従者は一杯いるんだぞ!
そうこうしていると森の奥にたどり着いた。
「この辺りなら邪魔が入らないわね。知らない人に無言で乱入されたらたまらないわ」
彼女は呼び笛を使った。
ステージ三の大森林ゾーン、ここで、レベル二七の僕は修行をするらしい。
「狩り尽くすわよ」
レベル九九のエルフ、薄着でエロい魔術師は、ボスキャラの出現に喜んでいた。
ゲームを楽しむ為に、想像力は必要不可欠だ。
それが欠落していれば、どんなゲームもつまらなく、くだらないと思ってしまうだろう。
フルダイブなんて無くても、小さなスマホ画面を見ながらゲームの世界に全身浸る事が僕には出来た。
ゲーム好きの想像力は豊かなのだ。
彼女との修行の合間に、
「何で、職業、魔法使いなんだよ」
と僕は聞いた。なんか彼女らしくない。
彼女は呼び笛を吹く、さっきから課金アイテムを大判振る舞いしている。この廃人め!!
おっさんも使うけど、ここまで節操無くはないぞ!
空間が歪む、大森林を歩き回って一時間に一体出会うのがやっとのボスキャラが出現する。凄いぞ! 金の力!
オークキング、図体がでかく、魔法攻撃はしてこないが、物理攻撃力と耐久力はレベル三十の僕にとっては中々の難敵。しかも、オークやゴブリンを数十体引き連れているので厄介この上ない。
「魔法使いって、頭良さそうでカッコ良いじゃない」
彼女は戦士の僕より先に敵の集団に突っ込んで、杖で彼らをタコ殴りし始めた。
子分達をあらかた倒すとオークキングの反撃を防ぐ素振りは見せず、彼女は殴り合う。
使えよ魔法、バカッぽいぞ!
全体攻撃魔法とかあるだろ?
戦場の隅で彼女が撃ち漏らしたゴブリンを剣で仕留める。
「早くこっち来て!」
息も絶え絶えのオークキングを抑えつけて彼女は僕を呼んだ。
トドメを刺せば、経験値ボーナスが手に入る。
だが、これが神経を使う。
「フレンドリーファイアーをオフにして良い?」
「ダメよ、オンだと火力が上がるのよ、早く慣れなさい!」
ガチの廃人さんはこれだから困る。
良いじゃん、火力が少しぐらい下がったって!
急いでオークキングの所に行き、そこからゆっくりと彼女に当たらないよう剣を振る。
「当たっても平気よ」
たくましいのね、カッコ良いわ、でも、僕は気にするんだよ!
オークキングが光となって消えていく。
「やっと十体ね、それにしても、レベルが思ったより上がらないわね……おまけの雑魚は、あなたが倒さないとダメよ!」
前衛のエロい魔法使いが、戦士職で後衛を務めている僕を理不尽に叱る。
「杖を振り回しながら、みかんちゃんが突っ込むからだろ!」
みかんちゃんは、神崎さんのゲーム名。
最初に敵集団に一撃を入れる彼女は、オーク達からのヘイトをしっかり稼いで、いつも彼らの人気者だ!
「あなたも突っ込みなさいよ」
それは、そうだけど、杖の一撃を喰らったら、僕、死ぬよ……、耐久力低いんだからね!
「みかんちゃんはオフにしてよ」
火力十分だからフレンドリーファイアーはオフで良いじゃん!
「ダメよ、それじゃ腕が鈍るわ」
廃人思考だな、この人……。
「あら、ゆめちゃんがインしたわ、町に戻るわよ」
彼女は、会話中に呼んだオークキングの一団を出現と共に魔法で消し炭にした。
その時の衝撃波でHPを半分以上持っていかれる。
トホホ……、僕って……。
「ほらぁ、鍛えてないから、怪我するのよ!」
歩きながら回復魔法を彼女はかけてくれた。
杖をかざし、ヨシヨシと僕の頭を撫でる仕草が光り輝くと、HPが急激に回復していく。
「ありがとう……」
「良いのよ別に……気にしなくて」
おお、なんて良い子なんだ!
「でも、やっぱり感謝なさい!」
彼女は堂々と言い放った。台無しだよあんた……。
元々は、君のせいだろ!
お願いだから、フレンドリーファイアーをオフにして!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます