国会に辿り着き



 国会に行くのなんて、小学生の時の社会科見学以来だ。

 僕は大きな建物を見て、少し圧倒される。


 この建物の地下に、ゾンビを消し去る薬があるのだ。

 そう考えると、少し緊張してしまう。



 場所は三鷹さんが知っているので、道案内を買ってでてくれた。


 郷埼さんのためならば、どこまでもついて行きます!


 そう言った彼の瞳は、輝きすぎて怖かった。

 どれだけ、郷埼さんに心酔しているのか。

 心強いが、ちょっと気持ち悪いとも思ってしまう。申し訳ないのだけど。


 ここまでは特に何の障害もなく来られたけど、さすがに正面の門は固く閉ざされている。

 柵の高さは、郷埼さんの身長よりも高くて、よじ登らなければこえることは出来なさそうだ。

 しかし触ったら、警報システムが作動するだろう。

 そうなると、集められたであろうゾンビが襲いかかってくる。

 出来れば、静かに侵入をしたいものだけど。


 さすがに、入れそうな穴は無さそうだ。

 ここのセキュリティが、万全じゃ無いはずがない。

 どう、入るべきか。


 みんなの意見を聞こうと、振り返ろうとした時、僕の頬を一陣の風が駆け抜けた。

 髪の毛が舞い上がり、そのすぐ後に熱さを感じる。

 そして、爆音。


 あんなにも高かった柵が、壊れていた。

 理由は、郷埼さんが肩に乗せているロケットランチャーを見れば明らかだ。


「邪魔なんだよなあ」


「は、ははは……」


 静かに侵入しようとしていた僕の考えは、剛埼さんの手によって、めちゃめちゃに崩された。

 僕は笑うしかなくて、穴が空いた柵を見て顔を引きつらせる。



 まあ、剛埼さんらしいといえば、らしいか。

 起こしてしまったことは、もう取り戻せないので、気持ちを切り替える。


「柵も無くなったことですし、中に入りましょうか」


 美香さんも三鷹さんも、豪快な剛埼さんの行動に、僕と同じような顔で笑っていたが、すぐに引き締める。


「よおし、行くぞお」


『お、お前ら、何をしてくれたんだー!?』


 剛埼さんと一緒に中に入った僕達を出迎えたのは、拡声器ごしの怒鳴り声だった。

 国会の建物の上に、とある人物が立っている。


『さ、柵を壊すことは何事だ!!』


 拡声器を持って叫んでいるその人は、剛埼さんが壊した柵を見て、驚いたみたいだ。

 ものすごく動揺しながら、怒りを伝えてくる。


『べ、弁償しろ!!  ここをどこだと思っているんだー!! 』


 とてつもない大声は、まあまあの距離があるはずなのに、うるさい。

 僕達は耳を押さえて、叫んでいる人の姿を見上げる。



 その人物は、よく知っている人だ。

 国の代表。

 この事態を作った黒幕である、首相がそこにはいた。


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