人類生存計画




 政府の勝手な計画のせいで、犠牲になりかけている人達を助ける。

 そのためのたった一つの手段を、三鷹さんが教えてくれた。



「『ゾンビ全滅薬』ですか。……そのままのネーミングですね」



「まあ、政府も考えている暇が無かったというわけです。確かに、馬鹿にしているかと思うぐらいの名前ですが」



 名前は幼稚だけど、その薬があれば人類が救える。

 とても素晴らしい薬だ。


 なんせ、それを使うだけで一つあれば、現在ゾンビになっている人達を全滅させることが出来るのだ。

 今までの苦労は何なのかというぐらい、チートな道具。


 手にいれられれば、僕達は救われる。

 こんな状況も、すぐに変わる。



 そんな話を聞いて、僕達がそれを手に入れないわけは無かった。



「手にいれられれば全てが終わりますが、向こうもそう簡単に渡すわけがありません」



 三鷹さんはスマホをしまい込んで、そして目を伏せる。



「私がこちら側に着いたことは、すでに向こうには伝わっているでしょう。そうなると、この薬を欲していることもバレています。セキュリティは確実に強化されてしまったでしょうね」



 私のせいで、すみません。


 申し訳なさそうに頭を下げた彼は、話を続けた。



「セキュリティだけならまだしも、あなた達はすでに目を付けられていました。移動をすることでさえも、困難でしょう」



「目を付けられているとは?」



「ニュースで指名手配になったのは、すでに知っていますよね。あれは、私がしたことではありません」



「そうなの?」



「ええ。あれは、ゾンビを殺し過ぎたあなた達を、邪魔に思った政府が仕組んだことです。予想よりも、ゾンビが減ってしまったことに、焦ったためだと思います」



「まあ、殺したのはほとんど剛埼さんだけど……」



「そこまでは、まだ掴んでいないとは思いますが、時間の問題でしょう。分かったところで、あなた達が無関係だとは判断されないでしょうけど」



 それもそうか。

 今まで一緒にいたのは、街にある監視カメラの映像でバレているはずだ。

 無関係だと主張したところで、信じてもらえるはずもない。


 そんなこと、言う気もないけど。

 僕の命は、剛埼さんに預けた気持ちでいるから。



「とにかく、警官や軍、大半の市民は敵だと思っても大げさではないでしょう。そうなると、とても動きづらいです」



 敵は、まだ生き残っている人達、政府の味方をしている人達。

 味方は、ここにいる人しかいないというわけか。



 これは、ゾンビを相手にするよりも難しそうだ。



「何とかなるだろう」



 しかし、剛埼さんの一言で、すぐに不安も無くなる。

 そんなものだった。




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