黒幕の正体とは……



 まさか、




 まさか、





 黒幕の正体が、この人だったとは。




 三鷹さんに、黒幕だという人物の写真を見せられた僕達は、ショックからしばらくの間固まっていた。

 その人のことは、ここにいるみんなが知っている。

 でも、あったことは無いはずだ。


 おそらく、剛埼さんでも。

 それぐらい、なかなか珍しい人である。

 いや、雲の上の存在だった。



 でも……



「黒幕が首相って、私達さっきまで家でくつろいでいたよね?」



「…………そうだね」



 まさか先程まで、黒幕にとても近いところにいたなんて。

 知らなかったとはいえ、なんという偶然だろうか。


 しかしそうなると、色々な疑問が出てくる。



「でも何で、こんな騒ぎをわざわざ起こしたのかしら?」



 それが一番の疑問だ。

 自分が治めている国を、何でわざわざ混乱に貶めるような真似をするのか。


 下手をすれば自分の身も危ないし、国民全員がゾンビになっていたら、どうするつもりだったのか。


 まともな人が考えた計画だとは、到底考えられない。



「それはですね……説明するのも、馬鹿馬鹿しいのですが……」



 黒幕の正体を教えてくれた三鷹さんは、なんでも知っているみたいだ。



「少子高齢化、貧富の拡大、増える借金、その他もろもろの要因があり、政府は内密でとある計画を立てました」



 完全に呆れた顔をしているから、ものすごくくだらない計画なのだろう。



「人類を選別。それだけのために、この計画は立てられ、そして実行されました。政府にだけ必要な人材だけを残し、それ以外の人をゾンビにする。そんな計画が」



 くだらない。

 あまりにもくだらない。

 その考えが本当に、国の首相が実行したものなのか。

 幼稚で、馬鹿らしくて、人のことを人だと思っていない。



「だから今、政府が選んだ人達は、安全なところにいるはずですね。そして待っている。選ばれていない人達が、全員いなくなるのを」



 その考えのせいで、たくさんの人が死んだ。

 それで残った人達は、今までどおり幸せに暮らせると思うのか。

 こんな簡単なことも予想出来ないなんて、子供でもすぐに分かりそうなことを。


 僕の中で、とてつもない怒りが湧いてきた。

 本気で許せない。



「でも、ここまでの騒ぎを、どうやって収めるんですか? まさか全滅するまで、待っているなんてことは無いでしょう?」



 幼稚ではあるけど、まさかそこまで考え無しじゃないはずだ。

 何かしら、対策を講じているはず。



「ええ、きちんとそこは考えています。そしてそれを利用すれば、生き残っている人達を救うことは可能です」



 僕の言葉に、三鷹さんはニヤリと笑った。

 その笑みは、剛埼さんによく似ていた。


 すでに、彼に毒されているみたいだ。




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