剛埼さん登場!
「……剛埼ぃ」
「よお、久しぶりだなあ……えーっと……」
「剛埼さん、三鷹さんですよ」
「ん?三鷹?」
「そうです!」
「おー、そうかあ。三鷹かあ。よろしくなあ」
剛埼さんが来ると、どうしてこうも緊張感がなくなってしまうのか。
僕は眉間に銃を向けられているのを忘れて、つい叫んでしまった。
いや、そうでもしないと、絶対に名前を間違えることは確定していたからだ。
そうなると、三鷹さんの怒りはさらにヒートアップしてしまう。
だからそうならないように、僕なりに頑張ったはずなんだけど。
「お前達、俺をおちょくって楽しんでいるんだろう。ふざけるな!」
すでに三鷹さんを、不快な思いにさせてしまったみたいだ。
僕に向けていた銃を、剛埼さんに標的を変えて叫ぶ。
「別におちょくったつもりはなかったんだがなあ……まあ、いいかあ。久しぶりに会えて良かったぜえ。俺の言葉が、届いたみたいだなあ」
銃を向けられたというのに、剛埼さんは特に気にしていない。
むしろ楽しそうに、三鷹さんを見た。
「はっ。お前の言葉が届いたわけではないさ。元から、お前がここに来るのは分かっていた。だから待っていたんだよ。それに、お前がまんまとはまったというわけさ」
丁寧な言葉をかなぐり捨てて、感情のままに話し出す。
きっとこういう反応の方が、普通の人間らしい。
剛埼さんの方が、おかしいのだ。
「そうかあ。まあ、探していたから手っ取り早いからいい」
「なっ!? ……ま、まあ、そうやって余裕でいられるのも、今のうちだからな」
剛埼さんの普段通り過ぎる様子に、また乱された三鷹さんだったけど、何とか持ち直した。
そんな不遜な態度は、何か策があるからなのか。
「なあんで、そんなに頑ななんだあ? 俺は別に嫌っていないけどなあ。むしろ好きだぜ」
「は、はあ?」
今のタイミングは、それを披露する時だったのかもしれないけど、剛埼さんが邪魔をして台無しにした。
それでも怒らなかったのは、成長したからなのか。
いや、剛埼さんの言葉に混乱しただけか。
「す、好きって?」
明らかに混乱している。
「ああ? 俺は真面目に努力している奴が好きだからなあ。やり方はあれかもしれないが、こんな状況になってまで目的を遂げようとしているんだろう。頑張っているじゃねえか」
「は、はあ? はあ?」
もう、とてつもなく乱されている。
そんなに、剛埼さんに褒められたのが嬉しかったのか。
それにしても赤面している様子は、見ていて少し気味が悪い。
こうして最大の敵になるかと思った三鷹さんは、剛埼さんの手によってあっさりと服従した。
テレビ局まで来た頑張りが、ほとんど無駄になった気がする。
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