敵を呼び寄せる作戦とは




 テレビ局の入口に着いた僕達。

 テレビを持っている人なら、絶対に聞いたことのある局は、やっぱり大きかった。

 初めて来たのだけど、どこが何なのか全く分からない。


 テレビ局は、テロなどの対策のために、迷路みたいな構造にしていると聞いたことがある。

 僕一人だったら、確実に迷うだろう。

 でも僕には、頼もしい味方がいる。



「み、美香さんは、本当にどこに何の部屋があるのか分かるんだよね」



「うん。何となくね。目的の場所には、必ず辿り着くようにするから」



 最初は、剛埼さんに道案内を頼もうとした。

 しかし自信満々に、壁に穴を開ければ一直線に行けると言われたら、全力で止めるしかなかった。


 その代わりに、あまり自身は無いが行ける気がすると言った、美香さんに頼むことにした。

 不安そうな顔もしているけど、自信も少しはあるみたいだ。



「えーっと、車の中でも確認しましたけど、もう一度しておきましょうか」



 中に入る前に、大事なことを確認しておく。



「ゾンビは見つけ次第、速攻で殺しましょう。それ以外、生きている人間は、たとえ敵だとしても殺さないように。気絶させるのが理想ですかね」



「OK。ゾンビは殺して、人は殺さないだなあ。分かった分かった」



「大丈夫。こんな世界になっても、人殺しにはなりたくないから。絶対に人間は殺さない」



 念のためにだったけど、この二人には必要なかったな。

 真剣な目を確認して、僕は剛埼さんに貸してもらった警棒を伸ばした。



「さあ、行きましょうか」



 そして、ようやく中へと入った。






 テレビ局の中は、ゾンビの襲撃をまだ受けていなかったらしい。

 出会うのは人間ばかりで、気絶させるのに苦労した。

 ゾンビが出てくる方が、まだ楽なのかもしれない。


 殺さないように手加減する技量が必要だから、剛埼さんがとても大活躍した。




 時間はかかったけど、目的の場所にたどり着く。

 とあるスタジオなのだが、中には誰もいなかった。

 その方が都合がいいけど、一抹の不安がよぎる。


 しかし、不安になっている場合じゃない。



「それじゃあ、お願いします。僕はスイッチを入れますんで」



「おお、なんか緊張するなあ」



「剛埼さんなら大丈夫ですよ」



「ありがとうよお」



 スタジオから離れて、僕はモニターがたくさんある部屋に移動した。

 カメラやマイクの方は、美香さんがやってくれるから問題は無い。


 出来るかどうか、まあ駄目でもやり直せばいいか。




 僕は、置いてあったマイク付きのイヤホンをさして、合図を送った。



「それじゃあ、放送を始めますよ」




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