敵は分かったので、作戦会議




どこかの組の、組長である高田さん(仮)。

そんな人が、剛埼さんを恨んで僕達を嵌めようと画策している。



少しだけ、いやかなりハードルが上がった。



僕と雫石さんは顔を見合わせて、お互いに困った表情を浮かべる。



「恨む理由はくだらないけど、やっていることは結構凄いわよね」



「確かに。僕達と剛埼さんが出会ったのは昨日なのに、すでに情報を得ているみたいですからね」



「その行動力を、もっと別のことに使えばいいのに。本当にくだらない」



名前も確かではないけど、性格は子供っぽくプライドが高いことは分かった。

そして自分がやりたいことに関しては、手段はいとわない。


かなり面倒くさいタイプだから、完膚なきまでに叩きのめさなければ、諦めてくれないだろう。

まあ、こっちには剛埼さんがいるから、そこはなんとかなりそうだ。



「まあ、今度はミジンコになるまで、ぶっ潰せばいいだろう」



本人もやる気みたいだし。

まだ見ぬ高田さんに対して、僕は心の中で合掌をした。



「それは心強いけど。その人がどこにいるのか、まさか知っているのよね?」



ココアを飲み終えたようで、カップをテーブルの上に置くと、彼女は剛埼さんに視線を向けた。

視線を真正面に受け止めた彼は、何も言わずに右から左へ視線をゆっくりと動かす。



「……いやあ、知らねえなあ……。この前は、向こうから来たし。その後は、放置していたからなあ」



色々と今まで話していて、少しは進んだと思っていたけど、全くスタート地点から進んでいなかったみたいだ。


また手がかりがない状態に逆戻りしてしまって、僕達は話し合いを一旦中止した。



彼女はココアのお代わりを取りに行って、剛埼さんは別の武器を取り出した。

僕は一人がけのソファに座ったまま、顔の前で手を組んで考えを巡らせる。



向こうは、剛埼さんをとても恨んでいる。

それは、行動の速さからも明らかだった。


だからそれを逆手に取れば、こっちから行かなくても、向こうから来てもらうように出来るかもしれない。

その方が、色々と準備が出来て効率的じゃないだろうか。



そう結論を出して、考えを伝えるため剛埼さんに話しかけようとした。




しかしその前に、雫石さんの叫び声がキッチンのある方から聞こえてくる。

声を耳にした途端、僕達は弾かれたようにキッチンへと走って向かった。





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