敵を考察してみる




 とりあえず出ていく前に、僕達は話をすることにした。

 敵に戦いに行くと決めたはいいけど、具体的にどこに行けばいいか分からない。

 さすがにそんな無謀な状態で、あてもなく外に出るほど考えなしじゃなかった。



「まあ、ニュースで大々的に指名手配できるんだから、ある程度の地位にいる人でしょうね」



 まだココアを飲みながら、雫石さんは冷静に言う。

 それに関して、僕と剛埼さんに異論は無かった。


 こんな短時間に、無実の僕達を犯罪者に仕立て上げるのだ。

 余程の偉い人じゃなければ、出来ない芸当だろう。



「でも、何故私達に濡れ衣を着せようとしたのか。それが分からなければ、誰かなんて見当もつかないでしょ」



「何か恨みを買ったってこと? 全く身に覚えがないんだけど……あ……」



 そんな偉い人なんかに、恨みを買うようなことはそうそう無いだろう。

 しかし、僕と雫石さんは気がついてしまった。



 ここには、そういう人に恨みを買いそうな性格の人がいることを。




 僕達は、その人の顔をゆっくりと見た。

 彼は、洋服の中にしまっていた銃を取り出して、構える動作を繰り返し行っていた。

 しかし僕達の視線に気がつくと、少し目を閉じて、そして頭の後ろを手でかく。



「あー。もしかしたら、あいつかもしれないなあ」



 そう、悪びれもなく言った。




 やっぱり、犯人は剛埼さんだった。




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