お尋ね者三人となり
生存者が、まだいることは分かった。
しかしそれと同時に、自分達がお尋ね者になっているという衝撃の事実も知る。
ゾンビだけではなく、他の人達も狙われているというわけだ。
全く嬉しくない情報。
出来れば、今からでも冗談だと言ってほしい。
それか、寝ぼけて幻覚でも見ていたんだと。
「まあ、そんな幻覚を見ているわけがないか」
僕は自分自身でツッコミを入れて、一人で笑ってみた。
「いいねえ。みんなから狙われているってわけだ」
部屋から出て来た剛埼さんは、手をはたきながら豪快に笑った。
「あれ、中の人達は大丈夫ですか? 起きたら、また襲ってくると思うんですけど」
きっととどめを刺していないんだと思うから、起きて来た時が怖いのだけど。
「ああ、大丈夫だあ。これで親指をくっつけて縛っているから、動けないと思うぜ。まあ、念も入れて柱にくくりつけてあるからなあ」
僕が聞けば、剛埼さんは何かを軽く投げてきた。
軽く受け止めれば、それはプラスチックみたいなもので出来ている紐だった。
「何ですか? これ?」
「ああ? 結束バンドだ。使い勝手が良いんだよなあ」
「結束バンド、ですか。ああ、ここをこうすると縮めることが出来るんですね。ああ、それで指を拘束するんですか。面白いですね」
初めて見たけど、こういう風に使うためのものなのだろうか。
僕はしばらく遊びながら、それの使い方を調べていた。
「それで、どうするの? ここにたくさん来たってことは、私達がここにいるのがバレているんでしょ。ずっと、ここにいるわけにもいかないんじゃないかしら?」
しかし雫石さんに言われて、そんなことしている場合じゃなかったのに気が付く。
僕が寝始めてからどのぐらい経っているのか分からないけど、随分と早く場所がバレているみたいだ。
「まあ、ここで出迎えるのも面白いけどなあ。ちまちましているのも面倒だよなあ」
剛埼さんは、スーツのポケットの中に武器を収納していく。
凄い。
スーツは、こんなにも色々なものが入るんだな。
そんな感動をしてしまうぐらい、たくさんの武器がスーツに収納された。
「ゴキブリは根元から叩かねえと、意味が無いからなあ。叩きに行くかあ?」
全てをしまい終わった剛埼さんは、極悪な笑みで僕達を見つめる。
それに対する答えは、何も言わなくても決まっている。
「もちろん、そうしましょ」
「私達を嵌めようとしたことを後悔させてあげましょうよ」
僕達は、武器を片手に全員で悪く笑った。
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