とはいえ、状況の確認は大事




 ありがたいことに、どうやら周りに倒れている人達は死んではいないらしい。

 ゾンビに対しては容赦がない剛埼さんだけど、一応そのあたりのモラルはあるみたいだ。

 ゾンビ殺しは数えきれないぐらいしているけど、人殺しではなかったようで安心した。


 僕はその人達を見ないようにして、ベッドから降りると部屋から出ることにした。

 途中、頭痛がして頭を押さえると、隣に並んだ剛埼さんが話しかけてくる。



「ああ、わりいなあ。途中で、武器が足りなくなったから、振り回しちまった。頭、何回かぶつけていたから痛かったかもなあ」



 頭痛の原因は、夢とかのせいじゃなく物理的にだったみたいだ。

 武器の代わりにされていたら、そりゃあ頭も痛くなるに決まっている。

 僕はズキズキと痛む頭を押さえつつ、扉を開けて外に出た。



「……おはよう、ゆっくり眠れたみたいね」



 リビングには、ココアの入ったカップを両手で持ち、ソファに体育座りをしている雫石さんの姿があった。

 誰かが襲っていた状況だというのに、凄くリラックスをしている。

 もしかして、本当は何も無かったのかと錯覚するぐらいだ。



「ああ、全部片付いたんだね。良かった良かった」



 しかし、やっぱり誰かが襲いに来ていたのは現実だったみたいだ。

 ココアを一口飲んで、彼女はなんてことなしに言った。



「そういえば、テレビがまだ放送しているみたいなの。面白いから、見てみなよ」



 そして、視線をテレビに向ける。



「あ、その前に、僕の部屋にいた人達が、何なのか知っているか聞きたいんだけど……」



「大丈夫よ。きっと、それも分かるから」



 話を戻そうとしたけれど、そう言われてしまったらテレビを見るしかない。

 僕は、テレビの方に視線を向けた。






 そこには、僕の姿が映っていた。



「……え……?」



 口から出て来たのは、その一音だけだった。



 テレビはニュース番組のようで、ゾンビパニックに陥っている様子と、その範囲をキャスターが淡々と伝えていた。

 そしてその中で、ゾンビパニックに陥った原因として、僕と剛埼さんと雫石さんの三人が関わっていると報道している。



『この三人に詳しい話を聞くため、現在警察が捜索を行っています。彼等に関する情報をお持ちの方は、こちらの番号まで連絡ください』



 そう締めくくられると、番組は終わった。



「え……っと……」



 全てを見終わった僕は、テレビの画面と彼女の顔を交互に見つめた。



「ど、どういうこと?」



「まあ、誰かしらにはめられたんでしょうね。だから、そこの部屋にいる人達が襲ってきたんでしょ」



 彼女は、とても冷静だった。

 だからこそ、この状況の異様さが更に際立った気がする。



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