新たな拠点で眠るまで
首相の家を候補に挙げた僕だったけど、もしかしたら中で生きている可能性もあった。
だから最悪、戦うことも考えていたのだけれど。
襲われたのか、もっと警備が厳重なところに避難したのか、誰もいなかったようで安心する。
さすがに剛埼さんにとっても、荷が重いだろう。
平和的に終われて、何よりだった。
無駄な労力を使うことなく、ゆっくりと眠ることが出来そうだ。
とても大きな建物の中は、たくさんの部屋があった。
客室用なのか、ベッドのある部屋が複数ある。
一人一部屋を使っても、まだまだ余裕があった。
「ああ、やっと落ち着けるわ」
まだ電気も水道も通っていたようで、シャワーを浴びてすっきりした雫石さんは、タオルで髪を乾かしながらソファに深く座る。
リラックスできたみたいで、表情が緩んでいた。
「いいところだなあ。変態君のおかげで、ゆっくり出来るぜえ」
先ほどまで眠そうにしていた剛埼さんは、拠点が出来たことで目が覚めたのか、元気になって楽しそうに武器の手入れをしている。
先ほどまで、首相の書斎と思われている部屋で暴れに暴れていたが、その状態からは落ち着いたみたいだ。
家人が帰ってきたらどうするつもりなのか、もし僕達がいる時だったらごまかすことは出来ない気がする。
僕はお風呂にも入って歯も磨いて、パジャマを拝借していて、眠気がマックス状態だった。
大きく口を開け、ろれつの回らない声で挨拶をする。
「ぼくは、そろそろねますねえ。なにかあったらおこしてくださあい」
パジャマのボタンを掛け違えているけど、それを直す労力を使うのも無理だ。
頭をゆっくりと下げて、返事を聞く前に、決めておいた部屋へと向かった。
「おう。ゆっくり休めよ」
「おやすみなさい」
後ろから声をかけられて、声を出す気力が無かったけど、頑張って片手を上げた。
「ぬあー。ふかふかのベッドだああああ」
ベッドに飛び込んだ僕は、あまりの柔らかさに気の抜けた声を出してしまう。
自分の部屋のより柔らかくて、このまま沈んでいってしまいそうだ。
どんどん眠気が体にまとわりつき、僕はゆっくりと目を閉じた。
「……そういえば、あれからまだ一日も経っていないんだなあ」
ゾンビに襲われてから、まだそんなに時間が経っていない。
あまりにも色々とありすぎて、その時間が濃厚過ぎて、もう何日も経っているかのようだ。
目が覚めてから、特に何も起こらなきゃいいけど。
絶対にありえないことを考えるのを最後に、僕は眠りについた。
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