僕の家族の話




「僕の家族は、生きています」



 僕は家族のことを思い出して、自然と頭が痛くなってくる。



「生きているって、もしかして連絡でも来たの?」



 雫石さんが、少し驚いた顔で聞いてくる。

 僕が断定的に言ったのが、初めてだったからだろう。


 しかし、その考えはハズレだ。



「連絡は来ていないけど、分かるんです。こんな世界になっても、死ぬことなんかないってことが」



 連絡なんてとってない。

 それでも、絶対どこかで生きていると、僕は確信しているのだ。



「それは何でだあ? 確認していないんだろう?」



 剛埼さんも、身を乗り出して聞いてくる。

 残念なことに、僕の話は興味を惹かれてしまったみたいだ。


 これは嫌でも、詳しく話をするしかない。



「僕には、母親と姉がいます。父親は、物心がつく前に死んでいました」



 久しぶりに二人の顔を思い出す。

 嫌な思い出も、一緒に出てきてしまった。



「母親と姉は、悪い人では無いんです。でも、うーんと、なんていうか……そうですねえ……豪快な人達なんですよ」



 一応、良く聞こえるように話してみたのだけれど、上手く誤魔化せた気がしない。



 僕の家族は、父親がいなかったからか、とても強かった。

 ヒエラルキーで言うと、一番は母親で、その次に姉、そして僕という順に自然となる。

 いじめられていたわけではないけど、こき使われていた。


 まるで召使のように色々と命令されて、僕は逆らわずに全てをやった。

 嫌ではなかったけど、とても疲れていた。

 それでもまだ学生の身だから、家を出るわけにもいかない。


 だから、我慢するしかなかった。



 そういうわけで、僕は嫌いでは無かったけど、家族を苦手と感じていた。



 ただし、これだけで生き残っていると思っているわけではない。

 昔から、二人は色々な事件を起こしているのだ。



 あれは、近所の公園に不良がたまりだした時のことだった。

 騒音、ゴミ、カツアゲと迷惑ばかりかけていた不良だったのだけど、誰も注意する人がいなかった。


 迷惑に思っていても、声をかける勇気が誰にもなかったのだ。

 だから余計に調子に乗って、騒ぎに騒ぎまくっていた。




 しかし、ある日突然来なくなった。

 近所の人はどうして来なくなったのかと不思議に思いながらも、静寂が戻ったことに安心した。

 結局、理由は表に出ることは無かった。



 でも、僕は知っている。

 いつものように不良がたまっている時に、母親と姉が襲撃したのを。

 ホラー映画の怪物のようなマスクをかぶって、顔を隠し手には釘バットとナタ。


 それが偽物でなかったのは、用意した僕がよく知っている。


 突然のことに驚く不良達に向かって、暴れに暴れまくった二人は、不良達とその場にいた僕にトラウマを残した。



 この話でも、まだ可愛い方なのだ。





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