……の前に片付け




 豪快過ぎるおびき寄せ作戦は、何故か上手くいった。



 手榴弾の音に反応して、デパートの近くにいたゾンビ達が、こちらに寄ってきている。

 そして生き残っている僕達の姿を視界に入れると、向かってくるスピードを上げた。

 剛埼さんの考えていた通りに進んでいるみたいだから、僕としては慌てる理由にはならない。


 しかし、銃を取り出そうとしていた手は、力なく下に垂れ下がった。

 ここは、僕が下手に手を出すべきじゃないだろう。

 むしろ邪魔になってしまう。



 一歩後ろに下がった。

 それに比例して、剛埼さん達は前に出る。

 対照的すぎる様子に、先ほどまで会った覚悟がしぼんでいくのを感じた。



 何とか出来るかと思っていたけど、結局僕は変われないみたいだ。

 銃を構えだすみんなを横目に、大きくため息を吐いた。





 こっちに来たゾンビ達は、肉に飢えているのかスピードが速い。

 こんなにも人数がいるのだから、ごちそうにしか見えていないのだろう。

 それが前菜なのか、メインディッシュなのか。

 こちら側としたら、判断に困るところだ。


「いよっしゃああああ! 腹ごしらえの前に、いっちょ運動してやるかああ!」


 テンションが上がっているみたいだ。

 雄たけびのような声が、びりびりとその場に響く。


 僕は耳を塞いで、それを流す。


 今まで結構、銃で暴れまわっていたけど、残りはまだあるのだろうか。

 そんな心配をしてしまうぐらい、今までに使いすぎている。


 しかしこうしているということは、何も心配しなくて大丈夫というわけだ。

 僕はいらぬ心労をと、考えを打ち消した。



 ここまで一緒にいたから、それぞれの武器の傾向というのが何となく分かる。


 剛埼さんは、意外にもハンドガンとかの武器でヘッドショットが好きだ。命中率は、今のところ百パーセント。

 桐島さんは、対照的にマシンガンとかの武器で撃ちまくるのが好きみたいだ。ゾンビを欠片まで残さないという、何かしらの執念みたいなものを感じた。

 雫石さんと川田さんは、銃としては特にこだわりはないみたいだ。キャーキャーと騒ぎながらも、容赦なくゾンビを殺していく。


 鈴木さんはというと……僕と同じく何もしていないかと思ったら、意外にもライフルを構えていた。遠距離武器、というところが彼らしい。きっと近距離戦は向いていないのだろう。

 それは弱虫とか言われるのかもしれないけど、何もしていない僕に比べたら断然ましだ。



 このパーティーの中で、何の役にも立っていないのは僕だけだった。

 それでも何もする気が起きないのだから、僕は完全なるお荷物というわけだ。




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