店の中を探索……の前に入店




 このデパートも、ゾンビに襲われていたみたいだ。


 グロテスク指定になりそうなものは、今のところ落ちていない。

 でも血痕や、荒れている様子が、それを物語っていた。



 問題なのは、すでにゾンビがいなくなった後なのか、それともまだいるのかということだ。

 いなければ楽だけど、それも難しい話なのかもしれない。

 デパートの中には僕達の食料はあるが、それはゾンビに対しても同じだった。


 人間の肉以外を食べるのかは分からないけど、もしも食べられるのならば、ここは天国だろう。

 狭い空間の中で戦うのは、剛埼さん達にとったは有利に働くのか。




 そろそろ、僕が頑張る番だ。

 ベルトにさした銃に触れる。

 このままだと、ただの飾りになってしまう。


 使ってあげる機会が、ようやく巡ってきた。

 僕は覚悟を決めて、銃を取り出そうとする。




 そっちに集中していたせいで、他の人達が何をしていたのか全く気が付かなかった。

 いつも僕が気が付くのは、物事が起きる直前か直後だ。

 そして今回は、後者だった。



 立っていられないほどの地響きと、鼓膜が破れるのではないかというぐらいの破裂音。

 僕は耳を押さえれば良いのか、しゃがみ込めばいいのか、判断に一瞬迷った。

 そのせいで無様にも、尻から地面に転ぶ羽目になる。


 もちろんそんな格好になってしまったのは僕だけかと思いきや、鈴木さんも少し離れたところで同じような格好をしていた。

 キャラが被っている。

 僕は遠い目をしながら、未だに立ち上がれずにいた。



 何が起きたのかは、剛埼さんの次の行動でようやく理解出来た。



「ほおら、よってこいやあ!」



 そう叫びながら、彼は勢いよく振りかぶった。

 その手に持っているのは、見覚えのない野球ボールぐらいの大きさの何か。

 彼が腕を振ると、放物線を描いて飛んでいった。


 野球ボールほどの大きさで、見覚えのないもの。

 しかし地面に着いた途端、それが爆発したのを見て気が付いた。



 あ、手榴弾だ。



 いつから持っていたのか知らないけど、数はたくさんあるみたいだ。

 惜しみなく投げていって、デパートの入り口の近くを破壊している。



 しかしデパートに投げているわけじゃないから、その目的は何なのか。



 出会った頃の僕だったら、たぶんそう思っていたのだろう。

 それでもずっと一緒に過ごしていたのだから、何となく考えていることが分かるようになってしまった。




 たぶん、ここの近くにいるゾンビを音で誘きよせているのだろうな。

 その考えを裏付けるように、遠くからたくさんの走ってくる音が聞こえてきた。



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