デパートに到着




 桐島さんと、川田さんのおかげで、ちょうどいいデパートの場所が分かった。



 剛埼さん運転の車と、桐島さん運転の車。

 二台でそのデパートまで行き、僕はその規模の大きさに、呆気にとられるしかなかった。

 こんなデパートがあるなんて、全く知らないでいた。


 五階という高さに、端から端まで走ったら疲れそうなぐらいの距離。

 一日で全ての店を回るのは、とても大変そうだ。



 ここならたくさんの武器がありそうだし、食料やその他諸々も用意出来る。

 この人数で、しばらく生活するには最適な場所だろう。



「わあ! 広い! お洋服を着替えたかったから、ちょうどいいね!」


 雫石さんが隣ではしゃいでいて、女子だなと感じた。

 確かに色々あったから、服は汚れている。


 だけど、そこまで気になっていなかった。

 しかし少しシャツを嗅いでみれば、汗や土やその他の臭いが混ざっていて、いい匂いでは決してないのに気がつく。



 いくらこんな状況だからといって、このままなのは絶対にまずい。

 今まで絶対に、ちょっと臭いと思われていたはずだ。


 セーラー服をもう一度着る気は無いけど、見た目を気にしなければ、そっちの方がまだマシなレベルじゃないか。

 僕は鼻先まで持ち上げていたシャツを、ゆっくりと下ろした。



 ふと、隣から視線を感じて、僕はそっちに顔を向ける。

 そうすればそこには雫石さんがいて、僕をじっと見ていた。


「えっと……何かな?」


 視線に耐えられず、僕は苦笑いを浮かべて尋ねる。



「……別に……」



 視線をそらされた。

 何だか懐かしいセリフだ。


 僕は少し懐かしさを感じながら、小さく痛んだ胸をおさえた。



 少し時間が経ったけど、やっぱりまだ嫌われているみたいだ。

 最初の出会いが良くなかったから、当たり前の結果か。



 それでも人に嫌われているというのは、精神的にやられる。

 何とか、関係を修復したいものだけど。



 僕は大きなため息を吐いて、彼女の隣から離れた。

 好きじゃない僕を視界に入れるのは、嬉しくないだろうという気遣いからの行動だった。



 そんな風に動いた僕のことを、周りがなんだか変な目で見つめてきたけど、理由は分からずじまいとなった。




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