減る運命
人の死というのは、どうしてこんなに物悲しいのだろうか。
この状況で、豪華な葬式なんて出来ないけど、それでも天国に行けるように別れの場を用意した。
静かで清潔感のある広場に、僕達六人はそれぞれ一輪の花を手にしている。
これは手向けの花だ。
出会って一緒にいた時間は短かったけど、気持ちを込めて棺の上に置いていく。
「今まで、ありがとう」
「とても勇敢だったわ」
「あなたのおかげよ」
「……ありがとう」
「本当に助かった」
一言、一言声をかけていき、最後に僕の番になった。
僕は目を閉じて眠っているその顔を直視することが出来ず、涙を浮かべながら花を置いた。
「……本当にありがとうございました」
それだけしか、言葉は出てこなかった。
言いたいことはたくさんあったけど、胸に込み上げてくるものがあって、喉がつまったように塞がってしまったからだ。
穏やかな表情を浮かべているなんて、苦しんで死ななかったようで良かった。
もしも苦しんでいたら、それだけでやりきれなくなる。
僕は、大きく息を吸い込んだ。
そして、その名前をゆっくりと呼ぶ。
「トメさん……」
彼女の死因は老衰。
九十五歳、いい最期だったのではないか。
ゾンビは、簡単に倒せた。
しかし、度重なる疲労は、彼女の体に蓄積されてしまったらしい。
昼寝をすると言った後、そのまま二度と起きてくることは無かった。
文字通り、眠るように亡くなったのだ。
彼女は幸せだった、そう思いたい。
「……さようなら、ありがとう……」
桐島さんが最後にそう声をかけて、棺に火をつけた。
最初は小さな火だったが、時間が経ち全体が包まれていく。
その炎を眺めながら、僕達は自然と目を閉じた。
彼女の、冥福を願って。
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