仲間は多い方が良い
ゾンビをピンにして、ボウリング。
その言葉もすさまじいけど、実際目にした光景もすさまじかった。
九体のゾンビを動かないように縛りつけて、それを実際のボウリングの玉を使って倒す。
重い玉を使っているのか、それとも投げている人の力が強いのか、玉が当たるとゾンビは吹っ飛んでいく。
放物線を描いて飛んで行ったゾンビは、重い音と共に地面に落ちていった。
ゾンビであるのに、少し可哀想だと思ってしまう。
「おお。ストライクだなあ!」
さらに話しかけづらい雰囲気があって、僕は固まっていた。
しかし、剛埼さんは普通に話しかける。
そういうところが、本当にすごいと思う。
「ありがとう。えーっと、誰?」
そして相手も、どちらかというと剛埼さんタイプだったみたいだ。
突然話しかけてきた相手に対して、普通に答えてきた。
「あー、自己紹介が先だったなあ。俺は剛埼。それで、雫石ちゃんと変態君だ」
「た、田中太郎です!」
僕の黒歴史が広まる前に、何とか被害を最小限にとどめようとする。
しかし、そこにいた四人の耳には、しっかり入ってしまったようだ。
「おお。剛埼と雫石ちゃんと変態君。よろしくね」
「三人も生存者がいたなんて驚き」
「本当だね。よろしく」
「……変態君ね」
僕はまたしても、変態という認識をされてしまった。
好意的にはなっているけど、心の中の悲しみは止まらない。
僕は目から出る汗を、そっと拭った。
そんな僕は触れられず、今度は四人が自己紹介を始める。
「俺の名前は、桐島。一応リーダーかな」
桐島さんは、剛埼さんのようなマッチョではなく、どちらかというと縦に長い細マッチョだった。
しかし貧弱という感じはせず、リーダーらしいキラキラ感がある。
学生の頃は、絶対にクラスの中心にいたタイプだ。
僕とは相容れないかもしれない。
「私は川田。よろしく」
川田さんは、そう言って桐島さんの腕に寄り添った。
どこからどう見ても、恋人同士だ。
しかし、とてもお似合いだ。
僕は、こんな状況なのにタンクトップとホットパンツという、場にそぐわない格好については何も言わなかった。
「ぼ、僕は鈴木。よ、よろしく」
鈴木さんは、僕と同類だった。
瓶底メガネに、落ち着きのない動き。
シャツはINしている。
だからこそ、多分僕とは合わないだろう。
僕達みたいなタイプは、同類こそ駄目な時があるからだ。
「トメよ」
トメさんは、おばあちゃんだ。
杖をついて、身長は僕の半分ぐらいしかない。
優しそうな表情で笑っていて、癒しではある。
しかし、なぜ生き残れたのか。
僕は会った時から、不思議に思っていた。
この人も、サッカーに参加していたのだろうか。
そっちの方が、さらに気になっていたけど。
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